資料No.

510-93

報告書タイトル

エキスパートシステムのつくりかた

委員会名

エキスパートシステム構築手法研究委員会

委員長名

三上市蔵(関西大学 工学部 土木工学科)

活動期間

平成2年4月〜平成5年3月

発行年

平成4年8月1日

報告書目次

1. 概 要
2. エキスパートシステムの基礎
2.1. エキスパートシステムとは
2.2. エキスパートシステム適用のメリット
2.2.1. エキスパートシステムを使うメリット
2.2.2. エキスパートシステムの従来システムに対する特徴
2.2.3. エキスパートシステムで扱う問題のタイプと適用性
2.3. エキスパートシステムのしくみ
2.3.1. エキスパートシステムに要求される能力
2.3.2. エキスパートシステムの構成
2.3.3. エキスパートシステムの構築に必要なもの
2.3.4. エキスパートシステムの種類
2.4. 知識の表現のしかた
2.4.1. 知識の種類
2.4.2. 知識の獲得
2.4.3. 知識の表現方法
2.4.4. プロダクションルール
2.4.5. 意味のネット
2.4.6. フレーム
2.4.7. 黒板
2.4.8. 論理
2.5. 推論のしかた
2.5.1. 推論
2.5.2. 推論の連鎖
2.5.3. 前向き推論
2.5.4. 後向き推論
2.5.5. 確信度
2.6. エキスパートシステムのつくりかた
2.6.1. エキスパートシステムの種類
2.6.2. プロダクションシステム
2.6.3. フレーム型システム
2.6.4. 黒板型システム
2.7. エキスパートシステムの今後の動向
3. ニューラルネットワークの基礎
3.1. ニューラルネットワークとは
3.2. ニューラルネットワークの原理とその学習機能
3.3. ニューラルネットワークの構造分野への適用例
3.3.1. 補修工法選定への適用例
3.3.2. RC床版の損傷度自動判定システム
3.3.3. 橋梁の景観設計への適用例
3.3.4. ダム構造物の景観設計への応用
3.4. 問題点および今後の展望
4. エキスパートシステム開発事例(中間報告)
4.1. システムの概要
4.1.1. 構築システムのテーマ選定
4.1.2. 予備設計の知識
4.1.3. システムイメージ
4.2. 知識獲得手法と使用ソフトの選定
4.2.1. システム構築イメージ
4.2.2. 土木構造物予備設計データの収集・整理(その3)における橋梁データ
4.2.3. 使用ソフトの選定およびその特徴
4.3. システム構築事例
4.3.1. 既存データからのIF〜THEN(プロダクション)ルールの抽出
4.3.2. エキスパートシェル『大創玄』によるシステム構築
4.3.3. システム評価
4.4. 問題点と今後の展開
付録
委員会活動記録(平成2年度〜平成3年度)
分科会活動記録

報告書全体概要

コンピュータが単なる計算機である時代は終わって、人工知能として機能するようになった。人工知能というと、入力した英語を日本語に訳す(自動翻訳)、話した日本語をコンピュータで扱える文字に換える(音声処理)、文書の文字をコンピュータで扱える文字として読み取る(OCR)など種々の分野があるが、最も進んでいるのがエキスパートシステムの分野である。
土木工学の分野でも6〜7年前からエキスパートシステムヘの関心が高まり、研究も開発も盛んに行われている。米国では、高速道路の防音壁の設計を扱うエキスパートシステムが多用されているなど、実用に供されているシステムは多い。日本では、大学のみならず、官庁や企業がエキスパートシステムを構築し、実用する努力を続けているが、本格的に実用に入ったシステムはそれほど多くない。
それにはいくつかの原因が考えられる。1つはエキスパートシステムに対する誤解があって、これは優れた専門技術者に代わりうると信じている人が多い。そのため、出来上がったシステムに不満を持つ。
この思いが誤解であることは容易にわかるはずである。コンピュータは自己増殖しないし、与えられたプログラムを自分で修正しながら実行するという学習機能もない。将来はいざ知らず、現在のコンピュータを使っているかぎり、教えた範囲でしか働かないのがコンピュータである。
2番目の原因は、実は専門家ほど常識を語らない。そのため、彼の知識をコンピュータに移植しようとしても、肝心な基本の知識、判断、推測などが獲得できない。知識を獲得する基本的手法として、専門家へのインタビューがあるが、これによって獲得できる知識体系はそれほど期待できるものではない。
3番目に、専門家はいつもすべての状況に対する解答を準備しているのではないことに気づくべきである。少々状況の異なった事態が生じたとき、そのときに始めて、専門家は自己の持つ知識と経験を総動員して、新しい事象への解答を生み出すのである。このような知識を前もって獲得できるであろうか。
これまでにずいぶん苦労をして多くのエキスパートシステムが構築されたが、専門家ほど無残な評価をしてきた。しかし、上に述べた理由を考えれば、責任はエキスパートシステムにもあることがわかるであろう。
こうした状況のために、現在では知識をいかに獲得するかが研究の中心になっている。知識獲得を支援するソフトウェアが開発されたり、獲得された知識から獲得されるべき知識を生成する方法が研究されたりしている。
建設コンサルタンツ協会近畿支部に設置された「エキスパートシステム構築手法研究委員会」は、実用に耐えるエキスパートシステムを構築するためには、まず知識を獲得するノウハウを獲得することが必要である、との認識に立って目的が設定され、活動が進められてきたものである。
単に理論的に研究を続けるよりも、OJT(オンザジョブトレーニング)の発想で、プロトタイプのエキスパートシステムを構築する中で、知識の獲得の手法を理解し、エキスパートシェルと呼ばれるアプリケーションソフトの利用法を検討しようとするものである。
そのため、委員会は3つの分科会に分れて、研究活動を続けている。1つは、架設工法分科会で、鋼橋やコンクリート橋の架設工法の選定システムを構築する。2つ目は、景観評価分科会で、既存の橋梁の景観評価を行うシステムを構築する。3つ目は、予備設計分科会で、鋼橋やRC橋やPC橋の予備設計を提示するシステムを構築する。
ソフトウェアとしては、プロトタイプを構築するので、パソコンで稼働する3種類のものを取り上げ、その特徴を理解すること、有効な使い方を習得することを目指す。1つは,エキスパートシェルで、「大創玄」を取り上げた。2つは、知識獲得の1手法である事例学習を支援するソフト「XPERTRULEPROTOTYPER」である。3つは、エキスパートシステムとは別の特徴をもつニューロコンピュータを研究するため、ニューロコンピュータソフト「RHINE」を取り上げた。
この中間報告では、架設工法分科会がエキスパートシステムの基礎知識を整理した。景観評価分科会は、ニューラルネットワークの基礎知識を整理した。そして、構築中のエキスパートシステムの例として、予備設計分科会が開発中の鋼橋の予備設計システムについて、知識の獲得から精錬、エキスパートシステムの構築に至るプロセスを説明する。このプロトタイプのシステムが以外に簡単な情報で、的確な推論結果を与えることをわかってもらえると思う。

 

委員長  三上市蔵

委員名簿

No.

所  属  名

氏  名

1

京都大学 工学部 土木工学科

古田 均

2

関西大学 工学部 土木工学科

三上市蔵

3

神戸大学 工学部 土木工学科

宮本文穂

4

オリエンタル建設梶@大阪支店 工務部

佐藤俊一

5

潟Iリエンタルコンサルタンツ 大阪支社

佐藤正典

6

兜ミ山鉄工所 橋梁技術開発室

坂本純男

7

川田建設梶@大阪支店

梶川靖治

8

協和設計

高岡茂

9

褐嚼ン企画コンサルタント 地質探査室

芝本昌彦

10

褐嚼ン技術研究所 大阪支社 技術第2部

神野裕昭

11

叶_戸製鋼所 社会開発本部鉄構橋梁部

岡本安弘

12

国際航業滑ヨ西技術所 コンサルタント事業部

中島元康

13

駒井鉄工梶@橋梁技術部設計3課

福住 建

14

鰹C成建設コンサルタント

谷口和良

15

大和設計梶@技術第2部

国枝昭彦

16

中央復建コンサルタンツ梶@技術開発室

山尾弘昌

17

東洋技研コンサルタント梶@技術第一部

三井 寛

18

日本技術開発梶@大阪支社 土木部

渡辺重雄

19

日本電子計算梶@技術営業部

植野孝雄

20

(抹)ニュージェック 土木第2部

保田敬一

21

パシフィックコンサルタンツ(株)西日本事業本部

金田逸朗

22

復建調査設計(株) 第一事業部

藤井友行

23

明建設計(株)

安福千尋

24

(株)横河技術情報 大阪営業所

栄田悦士