資料No. 02-2
報告書タイトル 橋梁維持管理研究委員会調査研究報告書(その2)
委員会名 橋梁維持管理研究委員会
委員長名 松井繁之(大阪大学 大学院 工学研究科)
活動期間 平成11年4月〜平成14年3月
発行年 平成14年8月1日

報告書目次

第1編 溶接による鋼橋の補修補強に関する調査研究(鋼構造物分科会)

1.はじめに
2. 鋼橋の損傷
 2.1. 鋼橋の損傷
3. 補修補強の現状
 3.1. 鋼橋の腐食損傷部位
 3.2. 腐食に対する補修補強
4. 腐食部位の溶接を用いた補修補強
 4.1. 高力ボルト補修と溶接補修の比較
 4.2. 溶接による補修補強の提案
5. 溶接を用いたK橋補修に対する試設計
 5.1. 橋梁概要と補修状況
 5.2. 現場溶接を用いた補修の試設計
 5.3. 補修試設計結果の比較
 5.4. 現場溶接が抱える諸問題
 5.5. まとめ
6. 補修補強に対する新しい試み
 6.1. 今後の維持管理に要求される項目
 6.2. アイデアの素材
 6.3. アイデアの具体化
7. おわりに
付録‐1 主桁支点部近傍設計計算
付録‐2 主桁支間部設計計算
付録-3 横桁設計計算

第2編 山田池橋耐荷力評価および各部材の剛性寄与率に関する調査研究(鋼構造物分科会)

1. はじめに
2. 山田池橋実験の概要
 2.1. 山田池橋の概要
 2.2. 静的載荷実験
 2.3. 溶接入熱に伴う温度およびたわみ計測
3. B活荷重載荷時の耐荷力評価式
 3.1. 既設橋梁の耐荷力評価式
 3.2. 補正係数μの算出とその評価
 3.3. B活荷重載荷時の応力度評価
 3.4. 考察
4. 各部材の剛性寄与率
 4.1. FEM解析によるモデル化の検証
 4.2. 各部材の剛性寄与率
 4.3. 考察
5. おわりに

第3編 コンクリート構造物に対する炭素繊維シートによる補修補強の設計・施工に関する調査研究(コンクリート構造物分科会)

1.はじめに
2. 炭素繊維シートの現状とその付着強度に関する最近の研究事例
 2.1. はじめに
 2.2. 炭素繊維の現状
 2.3. 炭素繊維シートの現状
 2.4. 炭素繊維シートによる補修補強施行手順
 2.5. 炭素繊維シート以外に使用する施行材料
 2.6. 炭素繊維シートの耐久性
 2.7. 炭素繊維シートとコンクリートとの付着強度に関する最近の研究事例
 2.8. 総括と展望
3. 床版の補強設計
 3.1. はじめに
 3.2. 設計マニュアルの比較
 3.3. 設計マニュアルに基づいた試設計例
 3.4. 総括と展望
4. 橋脚の補強設計
 4.1. はじめに
 4.2. 設計マニュアルの比較
 4.3. 設計マニュアルに基づいた試設計例(性能照査型設計)
 4.4. 総括と展望
5. 主桁の補強設計
 5.1. はじめに
 5.2. 設計マニュアルの概要
 5.3. 設計マニュアルに基づいた試設計例
 5.4. 炭素繊維シートの付着応力度の設計用値
 5.5. 炭素繊維シートによるせん断補強方法
 5.6. 炭素繊維シートの定着方法
 5.7. 総括と展望
6. おわりに

第4編 橋梁に要求される性能と維持管理との相関に関する調査研究(性能設計分科会)

1.はじめに
2. 橋梁の要求性能
 2.1. まえがき
 2.2. 性能規定の概要
 2.3. 研究内容と作業手順
 2.4. 性能の定義
 2.5. 性能の定量評価の一手法
 2.6. 性能に関するアンケート調査
 2.7. まとめ
3. 市街地における高架橋の景観性について
 3.1. まえがき
 3.2. 景観とは
 3.3. 高架橋が景観に及ぼす影響について
 3.4. 都市高架橋における景観性の検証
 3.5. 景観に関する各高架橋の評価
 3.6. 高架橋の橋台周辺の景観検討
4. 性能と維持管理
 4.1. まえがき
 4.2. 維持管理を容易とする方策
 4.3. 維持管理と補修・補強の容易さ
 4.4. コンクリートの劣化・損傷の遅延方策
 4.5. 補修補強レベルの決定
5. 今後の課題

第5編 橋梁点検要領運用の課題に対する検討(点検要領検討分科会)

1.はじめに
2. 橋梁点検の実施事例
 2.1. 点検方法
 2.2. 点検結果の整理
 2.3. 考察
3. 橋梁点検時のアンケート
 3.1. アンケート内容
 3.2. アンケート結果
 3.3. 考察
4. 点検要領の提案
 4.1. 道路の管理
 4.2. 国土交通省の橋梁点検
 4.3. 地方公共団体における維持管理
 4.4. 地方自治体における点検体制の提案
5. おわりに

報告書全体概要

 昭和30年代の後半から経済発展にあわせて種々の国際的イベント(東京オリンピック,大阪万博)が,我国で開催されることとになり,それを受け入れるための高速道路の建設が始まった。以来,オイルショックもあったが高速道路を始めとして,一般道路のバイパスや高規格農道等の道路基盤が整備されてきた。それと共に,物流の主流が鉄道から道路に移り,交通量の増加と車輌の大型化も進んできた。しかし,道路は勿論であるが,建設当時の橋梁構造の設計,材料選択,製作が,近年の利用状況を見込んだ最適な技術をもってなされたと言い難い点があると指摘されている。加えて,人々の公共心の欠如や社会システムの遅れがあって,物流の主役である大型車の過積載はごく最近まで日常茶飯事であり,極端な場合には設計軸重や設計総重量が制限値の3倍にも達する過積載車の走行が確認されてきた。さらに,酸性雨等の自然環境の悪化問題やアルカリ骨材反応等の材料問題も顕在化してきたため,構造物は疲労耐久性の低下と自然環境劣化が相乗し,種々の問題が発生し,その維持管理が大きな緊急問題となっている。これらの問題が表面化してからすでに,20年程度はすぎているが,まだ適切な維持管理手法が確立されていないのが現状である。
 建設コンサルタンツ協会の会員技術者において,橋梁の維持管理業務,例えば,点検調査・補修補強設計・耐久性照査等の業務が急増してきており,上記橋梁の損傷問題と維持管理対策の技術を習熟するとともに,合理的な方法の模索を必要としている。
 このような背景より,平成8年4月に橋梁維持管理研究委員会が発足し,平成11年3月の3ヵ年間の活動結果を,報告書「既設橋梁の耐荷力評価と補強設計の調査研究(平成11年4月)」として発表した。その後,橋梁維持管理に関する研究はまだまだ解明できていない問題も多いことより,会員技術者からの要望により,同じ委員会名で平成11年4月から活動を継続した。
 当委員会内において,4つの分科会(鋼構造物分科会,コンクリート構造物分科会,性能設計分科会,点検要領検討分科会)を編成し活発な議論を行ってきた。今回,所定の期限を迎えたので,ここに当委員会の成果をまとめることとなった。
 下記に各分科会の活動目的・概要および本報告書第1編〜第5編の概要を示す。

1.鋼構造物分科会
 今日までに建設された橋長15m以上の橋梁数は,全橋種では約14万橋に達し,そのうち鋼橋は約6万橋あり,その維持管理が緊急の課題となってきた。本分科会では,鋼橋の維持管理について着目し,直面している問題および今後の課題について研究を行った。また,前委員会で提案した既設鋼橋の耐荷力評価式について妥当性の検証を行った。そして,下記の2つの研究成果をまとめた。

第1編:溶接による鋼橋の補修補強に関する研究
 既設鋼橋の鋼桁部の損傷原因は,疲労と腐食に大別される。この中で,腐食損傷に着目し,その損傷の補修補強法の研究を進めた。既往の補修補強法では,高力ボルトを使用したものが多いが,本分科会では,現場溶接による補修補強法の可能性を研究し,具体的な橋梁をモデルにして試設計を行い,高力ボルトによる補修補強法に対する優位性と適用性を検討した。

第2編:山田池橋耐荷力評価および各部材の剛性寄与率に関する調査研究
 平成5年11月(1993)に大型車の交通量増加を考慮して,一般道においてもB活荷重が適用されることになり,ほとんどの既設橋梁でその耐荷力が問題となっている。その評価を,現行道路橋示方書の許容応力度法によれば,大部分の橋梁において補強が必要という結果を招くことになる。そこで,平成8年4月〜平成11年3月の橋梁維持管理研究委員会鋼橋分科会において,「既設鋼橋のB活荷重に対する健全性評価法」を提案し,実橋にてその提案式の妥当性を検証した。本分科会では,引き続き平成11年4月より,その健全性評価法の妥当性をさらに検証するために,実橋の載荷実験を行い,その載荷実験データに基づき,評価法の妥当性の検証を行った。

2.コンクリート構造物分科会
 炭素繊維シートは,比強度(単位重量当たりの引張強度)が高く,施工性に優れた補修補強材料として,1995年の兵庫県南部地震発生以降,橋梁上下部工,道路トンネルおよび建築構造物等への適用実績を着実に伸ばし,種々の設計施工指針も整備されている。同時に,材料特性,例えばシートのコンクリートに対する付着特性に関する要素レベルの基礎的な研究から,施工後の補修補強効果に関する部材レベルでの実践的な研究に至るまでの幅広い取り組みが現在も継続的に実施されているが,解明すべき課題が未だ多く残されていることが窺える。
 本分科会では,この炭素繊維シートに着目し,コンクリート構造物に対する炭素繊維シートの補修補強の設計・施工に関する調査研究を行い,下記の成果をまとめた。

第3編:コンクリート構造物に対する炭素繊維シートによる補修補強の設計・施工に関する調査研究
 現在までの研究状況を鑑み,材料特性に焦点を絞った材料班,具体的な部材への適用時の特性を対象とした床版班,橋脚班ならびに主桁班の4班編成とし,多角的な調査研究を行った。

3.性能設計分科会
 21世紀を迎えたわが国では,これまで構築されてきた既設構造物の維持更新および長寿命化を図ることが,建設部門の主要な業務となっている。しかしながら,供用中の構造物の余寿命や,損傷を受けた実構造物の耐久性を適切に評価することは,基礎データの蓄積が十分とは言えない現在の状況下では,非常に困難である。さらに補修補強の必要性を評価し,構造物の安全性や使用性を満足させることのできる合理的で実用的な設計法は,いまだ研究中の段階である。
 一方,より合理的な設計法として,性能設計法が注目され,土木学会や国土交通省土木研究所が中心となり,各種示方書の改訂作業も進んでいる。この設計法は従来の仕様規定から性能規定とすることにより,設計者の裁量を発揮しやすくすると共に,新技術新工法が採用されやすくなるという大きな特徴を有している。
 この様な状況を踏まえ,当分科会においては,今後重要度を増すであろう既設橋梁の評価手法に限定して,性能設計を適用することを考え,調査研究を行い,下記の成果をまとめた。

第4編:橋梁に要求される性能と維持管理との相関に関する調査研究
 当分科会では,@橋梁の性能の列挙,A社会環境性(景観),B維持管理に関連する性能(維持管理と性能)の3つの項目について研究を行った。

4.点検要領検討分科会
 橋梁維持管理の中で,個々の橋梁の損傷状況とその維持管理履歴の正確な把握は,損傷原因の究明と的確な補修補強方法の選定を行う上で非常に重要な要素となる。そのため各橋梁管理機関では橋梁点検要領を作成し管理橋梁の点検を行い損傷状況の把握に努めている。しかし,各機関で作成している点検要領は,橋梁全体の損傷状況とその履歴を把握するための定期点検,補修補強を目的とした詳細点検等の各種点検に対して明確に点検方法が整理されているとは言い難い,特に技術者の能力によって損傷度の評価にばらつきが見られる。
 本分科会では,橋梁定期点検に着目して,昭和63年に作成された建設省土木研究所の橋梁点検要領(案)を基準に,委員による橋梁点検を実施し,点検要領の中で@点検箇所A点検項目B損傷度の評価に対して問題点等のデータを抽出し,その中で,点検の目的,項目,評価に対して,より実用的な橋梁点検要領作成のための基礎資料となる検討を行い,下記の成果をまとめた。

第5編:橋梁点検要領運用の課題に対する検討   

 以上,4分科会の5編からなる報告書は,橋梁の維持管理に大きく貢献し新たな知見であると考えている。本報告書をご活用いただければ幸いである。
平成14年4月            橋梁維持管理研究委員会委員長 松井繁之

委員名簿

No. 氏名 所属
1 松井 繋之 大阪大学 大学院 工学研究科
2 井上 晋 大阪工業大学 工学部 都市デザイン工学研究科
3 鬼頭 宏明 大阪市立大学 大学院 工学研究科
4 金 裕哲 大阪大学 接合科学研究所
5 川端 千秋 (株)ウエスコ 姫路支店 技術部 構造設計課
6 石川 一美 (株)オー・テック
7 松田 明徳 (株)大島造船所 鉄構設計部 大阪設計課
8 高橋 謙一 オリエンタル建設(株) 大阪支店 開発営業部
9 竹下 一之 (株)オリエンタルコンサルタンツ 関西支社 総合技術部
10 梅田 聡 川崎重工業(株) 鉄構・機器事業部 橋梁技術部
11 石井 英則 川田建設(株) 大阪支店 技術部 技術課
12 武田 芳久 川田テクノシステム(株) 大阪設計部 設計課
13 藤原 一之 (株)橋梁コンサルタント 大阪支社 技術部
14 坪本 正彦 協和設計(株)
15 林 貴之 (株)栗本鐡工所 鉄構事業部 橋梁エンジニアリング部
16 粟津 雅樹 (株)建設企画コンサルタント 構造設計部
17 桂 謙吾 (株)建設技術研究所 大阪支社 情報技術部
18 浅井 忠昭 国際航業(株) 関西事業本部 道路部
19 橘 肇 駒井鉄工(株) 橋梁設計部 設計一課
20 房 進男 (株)酒井鉄工所 橋梁設計部 橋梁設計課
21 樋渡 達也 (株)修成建設コンサルタント 構造部 構造1課
22 竹村 浩志 ショーボンド建設(株) 大阪支店 技術部 技術課
23 小林 清 セントラルコンサルタント(株) 大阪支社 構造橋梁部
24 堀 恒 大日コンサルタント(株) 大阪支社
25 佐藤 秀雄 大日本コンサルタント(株) 大阪支社 構造計画室
26 尾崎 良明 中央復建コンサルタンツ(株) 第二設計部 第二課
27 佐々木 孝 中央復建コンサルタンツ(株) 総合2部 計測診断室
28 松村 也寸志 (株)中研コンサルタント 技術第一部 コンクリート調査課
29 田邊 敏宏 (株)トーニチコンサルタント 西日本支社 技術部 第四設計室
30 漆原 新一 東京エンジニアリング(株) 大阪支社 技術部
31 國光 正弘 (株)東京建設コンサルタント 関西支社 技術一部
32 福田 浩之 (株)東京測器研究所 明石営業所
33 渡辺 信也 東洋技研コンサルタント(株) 技術第2部
34 西原 伸 内外エンジニアリング(株) 大阪支社 技術部設計部課
35 涌田 充裕 日本技術開発(株) 大阪支社 構造・橋梁部
36 堀 元彦 日本橋梁(株) 設計部
37 斉藤 章彦 日本建設コンサルタント(株) 大阪支社 技術二部第四課
38 三尾 一男 (株)日本構造橋梁研究所 大阪支社 設計部
39 家入 正隆 日本電子計算(株) 科学技術事業部 建設技術営業部
40 八代 健太郎 (株)ニュージェック 橋梁部 橋梁第二室
41 増田 克洋 パシフィックコンサルタンツ(株) 大阪本社 交通技術部
42 最田 扇矢 (株)阪神コンサルタンツ 神戸支社 設計2部
43 桜井 勝好 日立造船(株) 鉄構・鉄機事業本部 橋梁設計部
44 中地 映司 三井造船(株) 千葉工場 設計部
45 木村 元哉 JR西日本 鉄道本部施設部