資料No. | 04-5 |
報告書タイトル | 水辺空間と人間との関わりにおける自然共生に関する調査研究 〜人と水辺との共生をもとめて |
委員会名 | 自然共生型水辺空間研究委員会 |
委員長名 | 禰津家久(京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻) |
活動期間 | 平成13年4月〜平成16年3月 |
発行年 | 平成16年8月1日 |
報告書目次
第1編 流域分科会
1.はじめに
2.山林域における人と水辺との関係と今後の整備のあり方
2.1 山林域の自然環境の変化
2.2 山林環境の変化が水辺空間に与える影響
2.3 対応策の検討
3.農村域における人と水辺との関係と今後の整備のあり方
3.1 農村域の環境の変化
3.2 農村域における問題点の整理
3.3 対応策の事例と環境整備に係る公共事業制度
3.4 対応策の検討
3.5 維持管理と住民活動
4.都市域における人と水辺との関係と今後の整備のあり方
4.1 都市域の環境の変化
4.2 都市化に伴う問題点
4.3 対応策の事例と法整備
4.4 対応策の検討
5.おわりに
第2編 河川分科会
1.はじめに
2.河川文化
2.1 川と人との関わり
2.2 日本人・日本文化としての河川観と川の魅力
3.河川環境の現状と整備のあり方
3.1 河川環境の現状と課題
3.2 河川改修の影響と効果
3.3 河川環境の課題
3.4 これからの河川環境
3.5 河川環境の保全・復元の考え方
4.人との係わりから見た水辺空間の目標
4.1 水辺空間における人との係わりの現状と事例
4.2 整備に関する調査手法と調査項目の抽出
4.3 アンケートによる評価
4.4 人との係わりから見た水辺空間の目標像
5.河川環境と人との共生
5.1 河川環境と人との共生
5.2 河川環境と人との共生に求められる要素
5.3 自然共生型水辺空間整備に向けた課題
参考資料
@現地調査調書
Aアンケート調査票
第3編 干潟分科会
1.はじめに
2.干潟の機能
2.1 水質浄化
2.2 生物生息
2.3 生物生産
2.4 親水機能
3.干潟アンケート調査
3.1 干潟見学会概要
3.2 アンケート調査の実施と結果の整理
4.干潟データベースの作成
4.1 干潟データベースの作成の概要
4.2 干潟データベースの作成の参考事例
5. 文献データベースの作成
5.1 文献データベース作成の概要
6. おわりに 〜自然共生空間としての干潟への提言〜
参考資料
第4編 住民参加分科会
1.はじめに
2.住民活動の現状(近畿地方の水環境活動団体について)
2.1 調査の概要
2.2 調査結果の整理
3.水辺に関わる住民活動の意識調査
3.1 調査の概要
3.2 水辺への意識に関する調査
3.3 自然共生型水辺空間に関する調査
3.4 住民活動に関する調査
4.自然共生型水辺空間における住民参加のあり方
4.1 意識調査結果
4.2 住民参加の方向性・提言
5.おわりに
報告書全体概要
河川整備の歴史的変遷は、1980年代以前では治水事業がメインであり、洪水流を少しでも早く海に流してしまうことを目的として、河道は多様性のない単一断面で直線化し、河川に人間を近づかせないような「人工水路的な」整備を行ってきた。この治水学理は欧米でも同様であったが、特に戦後の荒廃から再建したドイツでは1970年代から水域環境への強い憧れからNaturnaher
Wasserbau 直訳すれぱ近自然型河川工法が生まれ、環境問題への緒となったのである。わが国も戦後の荒廃から立ち上がり、国土再建はドイツと同様であった。
Naturnaher Wasserbau に触発された研究者・技術者が80年代後半にこれを日本にも導入し、自然をできるだけ取り戻そうとする動向が高まった。ちょうど地球環境問題の社会高揚と軌を一にしている。1990年代から、多自然型河川工法として、わが国に適したNaturnaher
Wasserbau 近自然型河川工法がパイロット的に模索され出した。すなわち、「うるおいのある水環境」への関心の高まりや生活様式の多様化によって、河川と住民との距離が縮まってきたのである。
それに伴って、河道内の多様性が求められるようになり、これまでの単一化された河川整備に代わって自然に配慮した整備、いわゆる「多自然型川づくり」が進められるようになった。1997年には、河川法が一部改正されて、河川管理の目的の中に「河川環境の整備と保全」が位置づけられたことから、河川事業において河川環境に対する一層の配慮が求められるようになった。
「多自然型川づくり」は試行錯誤をしながらも一定の成果を挙げてきたが、21世紀を迎え、ますます高まる環境問題に適切に対応するため、積極的に自然を保全・再生することが求められるようになってきた。そこで、生物の良好な生息・生育環境を有する河川・里山・海岸環境等を保全・再生するため、湿地や干潟の再生や魚が住みやすい流域づくり等の自然環境の再生を目的とした事業を実施するとともに、自然環境に配慮した多自然型川づくり、既設のダム容量の活用による河川の水量の確保、山腹工を主体とした里地・里山の保全などの多様な自然共生型の河川、ダム、砂防、海岸事業を水系一貫して推進することが求められてきている。また、河川整備に住民の意見が積極的に反映され始めてきているなかで、いかに自然と共生した整備を行うかを共に考える住民参加のあり方についても議論されてきている。
流水と土砂の相互作用によって河川や海域は絶えず変化し、営々と続く人間の営みにより自然環境も大きな影響を受けてきた。人と自然とが共生するためには自然環境の仕組みや潜在的な価値を理解するとともに、人間の自然環境に対する働きかけとその対応を理解することが必要である。そのうえで自然環境に対して負荷を取り除くとともに、必要な処置・工法を講じるべきであると考えられる。このような観点から、本委員会では河川及び海域における水辺空間の整備・保全ならびに人と自然との共生に資することを目的として、水辺保全技術・環境修復技術の研究や水理学的な指標、施設等の維持管理、住民参加等について、流域から海岸までの流れ方向性を考慮して@流域分科会、A河道分科会、B干潟分科会、C住民参加分科会の4つの分科会を設立し調査研究を行った。各分科会では独自に調査研究を行い、その成果を定期的に全体会議で討議し、調整・すりあわせを行った。
本報告書は、平成13年度から平成15年度の3ヶ年の各分科会の成果を各編としてとりまとめたもので、検討課題も多く残されていると考えられるが、本報告書が自然と共生した水辺空間の整備に関して何らかの参考となれぱ幸いである。
最後に、本委員会の委員が本業の合間に時間を見つけて研究活動を継続されたご苦労に対して敬意を表したい。
また、本委員会独自で行ったアンケート調査にご協力頂いた関係各位に厚くお礼を申し上げたい。
平成16年3月
自然共生型水辺空間研究委員会
委員長 禰津家久
委員名簿
No. | 所属 | 名前 |
---|---|---|
1 | 京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 | 禰津家久 |
2 | 大阪市立大学 大学院工学研究科 土木工学専攻 | 角野昇八 |
3 | 京都大学防災研究所 付属巨大災害研究センター | 河田恵昭 |
4 | 摂南大学 工学部 土木工学科 | 澤井健二 |
5 | 潟Eエスコ 兵庫支社 技術部 | 高橋邦治 |
6 | 応用地質 関西支社 技術部 | 村本将司 |
7 | 鹿島建設 関西支店 土木部 | 吉田 潔 |
8 | 協和設計 神戸支店 設計部 | 稲岡英樹 |
9 | 近畿技術コンサルタンツ 河川第1部 | 大塚雅章 |
10 | 褐嚼ン技術研究所 大阪支社 技術第3部 | 大屋敬之 |
11 | サンコーコンサルタント 大阪支店 技術部 | 串田宗史 |
12 | システム環境計画コンサルタント 技術部 | 赤井 裕 |
13 | 鰹C成建設コンサルタント 総合計画部 | 岡田佳子 |
14 | 中央復建コンサルタンツ 総合2部 | 柿田公孝 |
15 | 中央復建コンサルタンツ 計画環境部 | 中川 能 |
16 | 鞄結梃嚼ンコンサルタント 関西支店 技術2部 | 佐藤英章 |
17 | 鞄結梃嚼ンコンサルタント 関西支店 技術3部 | 佐藤幸雄 |
18 | 鞄建設計シビル 大阪事務所 環境・情報計画部 | 田中啓介 |
19 | 日本技術開発 大阪支社 河川部 | 平野寿謙 |
20 | 日本建設コンサルタント 大阪支社 河川グループ | 川津幸治 |
21 | 日本建設コンサルタント 大阪支社 水工グループ | 松井貴司 |
22 | 日本建設コンサルタント 大阪支社 河川グループ | 長屋琢次 |
23 | 日本工営 大阪支店 技術第1部 | 中野 裕 |
24 | 潟jュージェック 総合計画・環境部 | 笠松光明 |
25 | 潟jュージェック 河川・海岸部 | 真期俊行 |
26 | 復建調査設計 大阪支社 第2設計課 | 浅間忠明 |
27 | 潟zクコン ビオシステム事業所 | 田中義人 |
28 | 三井共同建設コンサルタント 関西支社 総合技術部 | 中條 優 |