資料No. 06-2
報告書タイトル 「地盤環境・防災の次世代技術に関する研究委員会」報告書
安全・安心・快適な生活のための次世代技術に関する調査研究
委員会名 地盤環境・防災の次世代技術に関する研究委員会
委員長名 田中泰雄(神戸大学 都市安全研究センター)
活動期間 平成15年4月〜平成18年3月
発行年 平成18年8月1日


報告書全体目次


1章 本研究委員会の構成

2章 地盤環境の保全・改善に向けて
 2.1. 概要
 2.2. 土壌地下水汚染
  2.2.1. 土壌地下水汚染の現状
  2.2.2. 土壌地下水汚染調査・対策の課題
  2.2.3. 土壌地下水汚染に関する新技術
 2.3. 建設リサイクル
  2.3.1. 建設リサイクルの現状
  2.3.2. 建設リサイクルの課題と新技術の必要性
  2.3.3. 建設リサイクルに関する新技術
 2.4. 地盤環境の保全・改善に向けて
 参考文献

3章 来るべき巨大地震に備えて
 3.1. 概要
  3.1.1.東南海・南海地震の概要と対策状況
  3.1.2.防災情報と防災対策
 3.2. 防災情報技術
  3.2.1.地盤防災情報の現状
  3.2.2.次世代への防災情報の伝達
 3.3. 防災対策技術
  3.3.1.液状化被害における防災上の課題(東南海,南海地震を例として)
  3.3.2.液状化対策技術
 3.4. 防災対策事業の必要性と今後の地震防災への展望
 参考文献

4章 これからの地盤の性能評価に向けて
 4.1. 概要
 4.2. これからの性能評価と地盤分野の課題
  4.2.1.性能設計の背景
  4.2.2.性能規定と性能設計の道具
  4.2.3.地盤分野における性能評価と課題
 4.3. 調査から設計までの地盤の性能評価
  4.3.1.設計の対象としての地盤の特徴
  4.3.2.現在の設計手法にみる地盤物性評価
  4.3.3.性能設計で求められる地盤特性
  4.3.4.設計に関わる地盤物性を求めるための新技術
 4.4. 施工から供用までの地盤の性能評価
  4.4.1.地盤の性能評価の着目点
  4.4.2.計測技術の現状
  4.4.3.計測の新技術
 4.5. 性能評価事例
  4.5.1.目標とする性能規定
  4.5.2.設計概要
  4.5.3.観測施工
  4.5.4.性能設計に向けての教訓
  4.5.5.その他の性能評価事例
 4.6. あなたの暮らしにかかわる地盤性能〜宅地の事例〜
  4.6.1.宅地に求められる性能
  4.6.2.宅地の性能目標値
  4.6.3.住宅の品質確保の促進等に関する法律と地盤性能について
  4.6.4.宅地地盤の性能評価の方法
  4.6.5.宅地地盤性能評価のあり方
 4.7. あとがき
 参考文献

5章 都市再生に関する現状と動向
 5.1. 概要
 5.2. 国内外における都市再生事例
  5.2.1.海外における都市再生事例
  5.2.2.国内における都市再生事例
 5.3. 今後の都市再生のための地盤技術
  5.3.1.都市再生における緑化の役割と課題
  5.3.2.地下開発の動向
  5.3.3.都市のアーバンスケルトン化
 参考文献

6章 都市再生に対する地盤工学的アプローチ
 6.1. 概要
 6.2. 都市高速道路の地下化に関する検討
  6.2.1.地下化に向けての検討条件
  6.2.2.設計・施工の概要
 6.3. 地盤性能に関する検討
  6.3.1.環状線周辺における地盤調査計画
  6.3.2.開削トンネル設計時における留意点
  6.3.3.開削トンネル施工時における留意点
 6.4. 地盤環境に関する検討
  6.4.1.建設発生土に関する規制・計画
  6.4.2.環状線の地下化による建設発生土
  6.4.3.建設発生土の利用方法
 6.5. 地震防災に関する検討
  6.5.1.環状線沿線の地震環境
  6.5.2.本工事区間の液状化検討
  6.5.3.液状化に対する留意点
 6.6. 都市高速道路の地下化の効果
  6.6.1.緑地の創成
  6.6.2.ヒートアイランド現象の緩和
  6.6.3.水都大阪の文化の再生
  6.6.4.経済的な効果
 参考文献


報告書全体概要

まえがき

委員長 田中泰雄(神戸大学)

 建設コンサルタンツ協会近畿支部では、環境、防災問題など今後の社会基盤整備において検討が必要な課題について、地盤工学の観点から次世代を担う新技術・知見について研究することを目的として、平成15年度より「地盤環境・防災の次世代技術に関する研究」委員会を発足させました。本委員会は、平成12年度から3年間の活動を行った「都市域の地盤防災研究委員会」を継承するもので、研究テーマを拡大し、「環境」、「防災」、「性能」、「再生」といった、より良い社会づくりに技術者が今後取り組まなければならない将来性の高い課題4テーマについて、平成17年度までの3年間で実施してきました。委員会構成としては、5名の学識委員(委員長;田中泰雄、副委員長:深川良一(立命館大学)、委員:三村衛(京都大学)、大島昭彦(大阪市立大学)、鍋島康之(大阪大学(現明石高専))の他、別掲の25名の委員で活動を行ってきました。
 委員会活動の3年間では、我が国の社会・政治・経済システムや、日本と世界(特にアジア)との関係等で大きな変革があったと考えられます。特に2005年1月の阪神・淡路大震災10周年に呼応して神戸で、しかも22万人以上の犠牲者を出したスマトラ沖津波災害の直後に開催された国連世界防災会議では、2015年までの世界的行動指針となる「兵庫行動の枠組み(Hyogo Frame of Action(http://www.unisdr.org/wcdr/wcdr-index.htm))」が提案され、世界の環境・貧困・防災問題の克服を目指し、持続性社会・世界構築の枠組みが宣言されました。認識すべき重要な点は、これらの問題を独立しては解決できず、効率良い連携戦略をたてて、安全で安心な持続的社会・世界作りに各国・各組織・各個人が取り組まなければならないことでしょう。このような重要な会議が日本で開催されたことは、我が国の優れた環境・防災・持続的社会作り技術の世界的貢献が期待されているためと考えられます。特に産業発展が著しいアジア諸都市での環境・防災・基盤施設等の問題克服では、日本の優れたリーダシップが大いに必要であり、このためには我が国の次世代地盤工学技術者がレベルの高い知的情報の研鑚・蓄積を重ねることは、非常に重要なものと考えられます。また現在の社会経済システムでは、建設投資・技術適用効果の明確化、プロジェクト推進のミッションとビジョン作りが強く要求されるなど、従前の受注工事の技術問題解決作業と言った単純な枠組みでは対応できない状況が、各技術者に課せられていると考えられます。
 本委員会では、こういった総合的観点からの都市建設プロジェクトへの取り組みが必要であることを強く認識し、広い視点を持つ次世代地盤工学技術者の育成が重要と考えました。このため、本委員会では環境地盤工学、地震地盤工学、地盤工学での性能設計、都市再生プロジェクトと地盤工学といった研究課題を設定し、特に関西都市域の地盤問題を念頭に、これらの課題と次世代技術による解決といった視点で検討を行ってきました。
 本報告書は、上記のような観点から以下の5つの章で研究成果をとりまとめたものです。
   第2章 地盤環境の保全・改善に向けて・・・・・・「環境」分科会
   第3章 来るべき巨大地震に備えて・・・・・・・・「防災」分科会
   第4章 これからの地盤の性能評価に向けて・・・・「性能」分科会
   第5章 都市再生に関する現状と動向・・・・・・・「再生」分科会
   第6章 都市再生に対する地盤工学的アプローチ・・「再生」及び他3分科会
 第2章では、地盤環境問題の内、地盤汚染と建設リサイクル問題について検討しており、地盤汚染では平成15年施行の「土壌汚染対策法」の概要と関連技術の課題、次世代技術としてバイオ・レメディエーション技術や数値解析技術の紹介、建設リサイクルでは廃棄物処理の現状と課題、さらには新技術の紹介が行われています。
 第3章では、今後30年間で確実に発生するとされる東南海・南海地震について、その概要と各自治体等での対応状況を示し、東南海・南海地震のような広域大規模災害で重要となる「自助」のための防災教育の重要性に着目した防災教育用の教材を提案しています。一方、専門的検討として、継続時間が長い地震動での液状化災害の問題点と対策技術についてもまとめています。
 第4章では、近年社会経済システムの変化にあわせて急速に進展している、「性能設計」と地盤工学との問題が検討され、まず地盤工学に於ける「性能設計」の考え方、常にバラツキと同居する地盤調査結果の取り扱いと調査の新技術、各種構造物の要求性能と地盤の関係、性能保証方法としての地盤計測技術、さらには地盤基礎工での性能評価の事例紹介を行っています。一方、一般市民と地盤工学が関連する問題として、「戸建住宅の宅地地盤」についても、性能評価のあり方をまとめています。
 第5章及び第6章では、平成14年の「都市再生特別措置法」施行以降、大都市等で活発となってきた都市再生問題を取り上げて検討しています。まず第5章では、国内外での都市再生プロジェクトの事例と課題を整理し、都市再生が目指すべき方向について検討し、続いて第6章で本研究委員会の全分科会による提案プロジェクトとして、「大阪の都市再生」の具体的検討例を示しました。テーマは「阪神高速道路(環状線)の地下化事業」であり、「環状線」の現況分析から始まり、地盤条件、施工法、性能設計、防災等の観点からの評価を行い、「環状線地下化」による効果を環境・文化・経済の面から評価して本プロジェクトを提案しています。
 最後に、本委員会の研究活動を取り纏めた本報告書は、将来の安全・安心で快適な社会の構築を地盤工学的観点から検討する上で、大いに参考になると確信するとともに、本報告書の作成に至る多大な努力を尽くされた委員全員の方々に深謝する次第です。



地盤環境・防災の次世代技術に関する研究委員会(順不同敬称略)

No. 所属 氏名 分科会 備考
1 神戸大学 都市安全研究センター 田中 泰雄   委員長
2 大阪市立大学 大学院 工学研究科都市系専攻 大島 昭彦     
3 大阪大学 大学院 工学研究科土木工学専攻 鍋島 康之    
4 立命館大学 理工学部 土木工学科 深川 良一   副委員長
5 京都大学 防災研究所 三村  衛    
6 (株)アーステック東洋 技術部 福塚 健次郎 A 代理;藤村健司
7 応用地質(株) 関西支社 技術部 住田 賢二 B 性能分科会主査
8 (株)オリエンタルコンサルタンツ 関西支社 楠  博典 B 代理;木島隆裕
9 川崎地質(株) 西日本支社 技術部工務グループ 溝端 一博 A  
10 近畿技術コンサルタンツ(株) 道路第二部第3課 新  邦夫 C  
11 計測技研(株) 専務取締役 藤原 正明 B 代理;岩切拓也
12 (株)建設技術研究所 大阪本社 水工部 地盤構造室 黒田 兆次 C 全体幹事
13 (株)建設技術研究所 大阪本社 地圏環境部 地圏環境室 長谷川 清史 C  
14 (株)鴻池組 大阪本店 土木技術部 佐野 祐一 C  
15 (株)鴻池組 大阪本店 土木技術部 山口  充 A 全体幹事
16 国際航業(株) 地質砂防部 志賀 直樹 @  
17 (株)錢高組 大阪支社 土木支店 工務部 金井 康治 @ 旧;菊田民人(〜H16.6)
18 大成建設(株) 関西支店 滋賀営業所 西川 誠一 A  
19 (株)ダイヤコンサルタント 関西支社 技術グループ 地盤設計チーム 甲斐 誠士 @  
20 中央復建コンサルタンツ(株) 鉄道系グループ 手嶋 正和 C  
21 中央復建コンサルタンツ(株) 計測診断系グループ 中野 尊之 B  
22 (株)日建設計シビル 大阪事務所 地盤構造設計部 片山 政和 B  
23 日本技術開発(株) 大阪支社 道路・交通部 坂根 勇一 @  
24 (株)ニュージェック 技術開発グループ 小野  暁 @  
25 (株)ニュージェック 港湾・空港グループ 平井 俊之 C 再生分科会主査
26 (株)ニュージェック 港湾・空港グループ 前川  太 B  
27 パシフィックコンサルタンツ(株) 大阪本社 プロジェクト部 地盤技術グループ 伊藤 正純 @ 環境分科会主査/代理;門田浩一
28 (株)阪神コンサルタンツ 神戸支店 地盤技術グループ 白川 和靖 A 防災分科会主査
29 復建調査設計(株) 大阪支社 第2設計課 中田  賢 C  
30 不動建設(株) 大阪本店 土木技術部 堀岡 良則 @ 旧;奥谷良治(〜H16.4)

                                             @環境分科会 A防災分科会 B性能分科会 C再生分科会