資料No. |
510-121 |
報告書タイトル |
土木デザインの実践的理念と手法に関する調査・研究 |
委員会名 |
土木デザイン研究委員会 |
委員長名 |
榊原和彦(大阪産業大学 工学部 環境デザイン学科) |
活動期間 |
平成9年4月〜平成12年3月 |
発行年 |
平成12年8月1日 |
報告書目次
はじめに−各章のテーマ−
1. 土木デザインのあり方と方法
1.1. 土木デザインが景観にどのような効果をもたらすか
1.2. デザイン・コンセプトをどのようにデザインするか
1.3. デザインの理念・コンセプトは,どのようにデザイン(かたち)に結びつけるのか
2. 自然の中の土木
2.1. 自然を育む土木とは
2.2. 自然の力に従う土木
2.3. 地形と土木デザインのあり方とは
2.4. エコトーンと土木デザイン
2.5. 自然景観対策としての擬似自然のあり方とは
3. 時間の中の土木
3.1. 歴史が生み出した意匠をどう土木に取り込むか
3.2. エージング効果と土木デザイン
3.3. 保存のデザインをどう行うか
3.4. 歴史を残す土木とはどのようなものか
3.5. セッティング(場面づくり)の土木デザイン
4. 地域の中の土木
4.1. 土木デザインにおける地域性の継承と創造
4.2. 地域のニーズにマッチし,地域に媚びない土木デザインにするにはどうするか
4.3. 環境資源としての土木施設を地域づくりにどう活かすか
5. 人の中の土木
5.1. 人の集う土木デザインとは
5.2. 土木デザインに“人”をどう取り込むか
5.3. 住民参加の土木デザインにどう取り組むか
6. 風景の中の土木
6.1. 自然景観と調査する土木デザインとは
6.2. 修景・改修のあり方
6.3. 景観を演出する方法とはどのようなものか(光と陰影の活用)
6.4. 道路における移動空間の内景観形成の仕方
7. 土木空間
7.1. 人の感覚にあう土木空間とはどんなものか
7.2. 土木空間における個性づくりとは
7.3. デッドスペースと土木デザイン
7.4. 防災空間としての土木空間をいかにつくるか
8. 土木デザイン
8.1. 構造物の形態美とは
8.2. 土木デザインのスケール
8.3. 美しさを創出するために必要な装飾とは何か
8.4. つくり過ぎないデザインをいかにつくるか
8.5. 土木構造物の再生のデザインのあり方とは
8.6. 必要悪となりうる場合の土木のリアリティをどう処理するか
9. 素材と土木
9.1. 素材をいかに使いこなすか
9.2. 美しい鋼構造物とは
9.3. 美しいコンクリート構造物とは
10. デザイン手法
10.1. 物の見せ方,隠し方
10.2. デザインにおける視覚分析はどのようにすればよいのか
10.3. デザインをどう評価するか
10.4. CGをデザイン・ツールとしてどう使いこなすか
報告書全体概要
土本デザイン研究委員会は,土木デザインの基本的な理念や実践的手法を確立することを目的として,委員42名(内,外来委員5名)をもって平成9年4月に発足(最終の委員数は41名)し,平成12年3月までの3年間にわたって研究活動を続けた。
本委員会では,土木デザインに関わるさまざまのノウハウをまとめることを目指した。「ノウハウ(know-how)」とは,物事のやり方に関する知識,仕事の心得,専門的知識(technical
knowledge)であり,専門技能,特殊技能,手腕,こつ,秘訣(faculity
or skill for a particular activity)である(「小学館:ランダムハウス英和大辞典」より)。土木デザインは,「土木」という特定分野における「デザイン」であって,一つの,そして,独自の専門的デザイン分野であり,土木デザインに関わるノウハウが存在する。それらは,土木技術者,土木プランナー,土木デザイナー他,土木に携わる人々が「心得」として承知し,わきまえておかなければならない。土木デザインに関わる基本的な理念や指針であり,専門的知識や独自の方法である。あるいは,土木技術や土木を造り上げる社会システムと結びついて成り立っているデザインについての技,術である。
そういうノウハウは,土木デザイン,シビック・デザインに関わる著作や部門別の景観設計をテーマとした書物,景観整備マニュアル等が,数多くとは言えないまでも出版されるに至っている現在,潜在的にであれ,著積が進みつつあると言える。その中で,私達が目指したのは,土木デザインに携わる人々,とくに,土木技術者の多くから了解が得られ,共通した認識となるようなノウハウである。そのためには,土木デザインという領域の存在自体を確認し,土木デザインの必要性についての認識・理解を深めることから始めて,土木技術者が納得し得る,あるいは,土木技術者が実感として共鳴し得るものへとまとめ上げることが必要である。都合のよいことに,本研究委員会の参加メンバーのほとんどは,土木技術者である。造園や建築の教育を受けた者もいるが,今は建設コンサルタントとして,土木の計画,デザインに携わっている者ばかりである。そういう広い意味での土木技術者が,日頃の業務の中から得た問題意識に基づいて,土木デザインに関わる論点・問題点・課題を抽出し,それについての解・答を示すことかできれば,それらは,上に述べた目的に沿う実践的に役立つノウハウとなろう。
そこで,ここでは,ひとまとまりのノウハウを,土木デザインに関わるある一つの論題とそれに対する解・答として提示された指針,解決策,手段などの全体と考えることにした。各ノウハウの記述では,まず,その論点を“問い”として提示している。それは,疑問形の単文で,簡潔・包括的に問題の在り処を示すものであるが,それだけでは漠然としているので,何が問題であるのかをより詳しく示すために,その“問い”を発するに至った“背景”(解答者の問題意識,対象とされている事柄や土木の存する社会的背景……),問題や用語のより詳細な定義,“問い”にまつわる課題などを記述している。これらが“解題”である。そして,それを受けて,ノウハウとして述べるべき事柄の“テーマ”を簡潔・明確に示している。“解答”では,解答の内容をイメージさせる写真(または図)とその解説,解答の内容を端的に示す“解答の主成分”,本文,解答を図化した“ダイヤグラム”,を内容とする。そして,最後に“事例”を挙げ,解説を加えることで,解答への理解を深め,解答の論拠としている。
ところで,ノウハウは,土木デザインにおいて着目・考慮したり,テーマ,対象とすべき事柄の全般に渡って網羅されている必要があるので,そういう事柄を予め範疇化しておいた。ここでは,参考文献1),2)にもとづいて10カテゴリーに区分している。
はじめの「土木のデザイン理念」は,土木デザイン全般に対する本質的なあり方,考え方に関わる範疇である。
次に,土木を取り巻く周辺や土木のあり方を規定する要因・条件を取り上げている。それらは,土木デザインにおいて考慮されたり,重視されたり,特にテーマとして取り上げられたりする“もの”や“こと”であって,それらを5つに大別し,土木がそれらに取り巻かれて存在するという意味を込めて「〜の中の土木」というように表現した。
それらは,「自然の中の土木」「時間の中の土木」「地域の中の土木」「人の中の土木」「風景の中の土木」である。
その次の「土木空間」は,土木(どちらかといえば個々の,単体としての土木)が他の環境構成要素とどのように関係し,全体として,あるまとまりをもった空間あるいは環境を構成するという側面を取り上げたものである。これに対して「土木デザイン」は,あるまとまりをもった単体としての土木そのものに着目してのデザインや造形の理念,考え方,技法に関わった事柄である。そして,「素材と土木」は,構造物や空聞のかたちを規定し,それに確たる造形的性格を与える素材と土木の関係についての範疇である。最後に,「デザイン手法」は,デザインの手法そのものに閨わる。
研究委員会では,各委員が,以上のカテゴリーに含まれるであろうノウハウ(“問い”から“解答”,“事例”に至るもの)を一つづつつくりあげることにし,まず,“問い”の設定からはじめ,3年間にわたって研究を遂行して,“解答”を得たのである。もとより,デザインという創造性が要求される問題,要求に対する物的解決策が無数に存在するという土木デザインの問題に対して,唯一の解しか存在しないということは考えにくいので,“解答”において解を示したとしてもその解は,多くの場合,解の一例でしかない場合が多い。あるいは、“解答”の中には,解を得るに至る筋道や基本的な知識や考え方のみとなっているものもある。しかし,実践的ノウハウというのは,予め用意された解が,出会った土木デザイン問題に対してその通りに適用でき,その通りにすればよいデザインが出来上がるというようなものではないだろう。そうではなく,土木デザインの実践において実際に突き当たるであろう問題に対して考える手立てを与えたり,土木デザイン問題に対処する際に実際に考慮すべき事柄を提示することこそが必要であって,明示された論理的展開をもって示されたここで言うノウハウは,実践的に役立つものとなっていると考える。
「土木デザインの実践的理念と手法に関する調査・研究」と名付けられたこの報告書は,上記の研究成果をまとめるものである。
なお,委員会は,実際には,5研究分科会に分かれて研究を遂行した。分科会の総開催回数は,133回に上る。各分科会のご指導をいただいた川崎雅史京都大学助教授,鳴海邦碩大阪大学教授,増田昇大阪府立大学教授,山崎正史立命館大学教授には,心より、感謝を申し上げたい。22回開催した全体委員会では,研究の方向や内容の調整の他に,多数の講演会・勉強会・見学金を行っている。これが各委員の見識を高め,デザインについての調杏を行うのに役立ったことと思う。こうした分科会,全体委員会を通じて得ることの出来た研究成果以外の成果,すなわち,委員会活動を通じて委員個々が,主体的に学び,考え,学識委員の人格・識見に触れ,他の委貝と交流・コミユニケーションするところから体得した土木デザインに関わる基本的態度,考え方,ノウハウは貴重である。また,結果的につくられた人的ネットワークも今後の財産となろう。
最後になったが,本研究委員会を支えていただいた(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部,参加いただいた委員各位,委員を派遣していただいた会社,調査・研究にご協力をたまわった方々に,心から感謝の意を表したい。そして,今後,この委員会の成果・課題を引き継ぐかたちで発足・活動する景観デザイン手法研究委員会に対しても,変わらぬご支援を賜ることを祈る。
平成12年3月
土木デザイン研究委員会
委員長 榊原和彦
委員名簿
No. |
所属名 |
氏名 |
1 |
大阪産業大学 工学部 環境デザイン学科 |
榊原和彦 |
2 |
京都大学 大学院工学研究科環境地球工学専攻 |
川崎雅史 |
3 |
大阪大学 大学院工学研究科環境工学専攻 |
鳴海邦碩 |
4 |
大阪府立大学 農学部 農業工学科 |
増田 昇 |
5 |
立命館大学 理工学部 環境システム工学科 |
山崎正史 |
6 |
潟Aーバンスタディ研究所 |
土橋正彦 |
7 |
潟Aール・アンド・ディーエンジニアズ 大阪支店 |
越智賢二 |
8 |
潟Eエスコ 大阪支社 |
周川秀夫 |
9 |
潟Iリエンタルコンサルタンツ 関西支社 |
富安 浩 |
10 |
川田工業梶@大阪支社 技術部 |
水野 浩 |
11 |
鰍ゥんこう コンサルタント事業部 設計部 |
藤本由美子 |
12 |
葛エ梁コンサルタント 大阪支社 技術部 |
土橋昌弘 |
13 |
協和設計梶@設計部 |
北野俊介 |
14 |
近畿技術コンサルタンツ |
木戸豊冨美 |
15 |
褐I本鉄工所 鋳物事業部 |
安藤隆史 |
16 |
潟Pーエーケー技術研究所 |
林 文雄 |
17 |
褐嚼ン企画コンサルタント 構造設計部 |
松川 努 |
18 |
褐嚼ン技術研究所 金沢事務所 技述部 |
西田憲造 |
19 |
轄総ロ技術コンサルタント 建設環境部 |
飯田 章 |
20 |
国際航業梶@関西事業本部 道路部 |
高橋 功 |
21 |
国際航業梶@関西事業本部 地域開発部 |
平田顕三 |
22 |
清水建設梶@大阪支店 土木技術部 |
藤田宗寛 |
23 |
鰹C成建設コンサルタント 総合計画部 |
河本一典 |
24 |
大日本コンサルタント梶@大阪支社 構造部 |
松村浩司 |
25 |
大和設計梶@技術第1部 |
為國正吾 |
26 |
中央復建コンサルタンツ梶@第一設計部 |
草刈智一 |
27 |
中央復建コンサルタンツ梶@第四設計部 |
杉岡清博 |
28 |
潟gーニチコンサルタント 西日本支社 |
山根幸雄 |
29 |
東京エンジニアリング梶@大阪支社 技術部 |
萩原隆朗 |
30 |
樺堀ソイルコーナー |
中堀和英 |
31 |
日本橋梁梶@環境事業第1部 |
海田貴子 |
32 |
日本建設コンサルタント梶@大阪支社 |
四辻裕文 |
33 |
日本建設コンサルタント梶@大阪支社 |
山田幸一郎 |
34 |
日本振興梶@大阪支店 技術部 |
島本裕子 |
35 |
潟jュージェック 地域整備部 |
出口直彦 |
36 |
パシフィックコンサルタンツ梶@大阪本社 |
西上律治 |
37 |
パシフィックコンサルタンツ梶@大阪本社 |
五十嵐隆之 |
38 |
潟Aーバン・エース 都市部 (元 阪急エンジニアリング梶j |
堀 秀行 |
39 |
潟zクコン 技術開発統括部 |
木村定勝 |
39-2 |
潟}エダ 大阪支社 |
荒木元世 |
40 |
三井共同建設コンサルタント梶@関西支社 |
峯元小百合 |
41 |
八千代エンジニヤリング梶@大阪支店 |
石塚裕子 |