資料No. |
517-9 |
報告書タイトル |
阪神・淡路大震災の事例を踏まえた大阪湾域における複合災害対策 |
委員会名 |
湾域都市の水防災研究委員会 |
委員長名 |
河田恵昭(京都大学 防災研究所) |
活動期間 |
平成6年4月〜平成9年3月 |
発行年 |
平成9年7月1日 |
報告書目次
1.はじめに
1.1.研究目的
1.2.検討結果の概要
2.阪神・淡路大震災における課題と提言
2.1.はじめに
2.2.阪神・淡路大震災の以後の動向
2.3.現状把握と問題点
2.3.1.災害事象
2.3.2.生活関連
2.3.3.救助・救出
2.3.4.救援
2.3.5.復旧(インフラ)
2.3.6.復旧(ライフライン)
2.4.課題と提言
2.4.1.ハード施設からみた課題と提言
2.4.2.ソフト(行政、執行体制等)からみた課題と提言
2.4.3.情報からみた課題と提言
3.複合災害における課題と提言
3.1.検討の必要性
3.1.1.既往の災害想定の考え方
3.1.2.場所・時間想定の必要性
3.1.3.超過災害に対する考え方
3.1.4.複合災害検討の必要性
3.2.外力(ケース)設定
3.2.1.対象フィールド
3.2.2.想定する災害の組合せ
3.3.ケース1(南海道沖地震→津波→洪水)
3.3.1.災害事象
3.3.2.生活関連
3.3.3.救助・救出
3.3.4.救援
3.3.5.復1日(インフラ)
3.3.6.復旧(ライフライン)
3.4.ケース2(直下型→南海道沖地震→津波)
3.4.1.災害事象
3.4.2.生活関連
3.4.3.救助・救出
3.4.4.救援
3.4.5.復旧(インフラ)
3.4.6.復旧(ライフライン)
3.5.課題と提言
3.5.1.ハード施設からみた課題と提言
3.5.2.ソフト(行政、執行体制等)からみた課題と提言
3.5.3.情報からみた課題と提言
4.結語
4.1.結語(ハード面からみた)
4.1.1.阪神・淡路大震災で現実化した課題、提言
4.1.2.複合災害
4.1.3.今後の課題
4.2.結語(ソフト面からみた)
4.2.1.現実化した課題
4.2.2.複合災害の発生
4.2.3.今後の展望
4.3.結語(情報面からみた)
報告書全体概要
大阪に代表例されるわが国の湾域都市域では、昭和年代初頭からの臨海部を中心とした地盤沈下の累積や近年の社会の高度化・複雑化に伴うエネルギーと情報への過度の依存が生じている。その結果、それらは災害脆弱性を増大させ、都市災害としての津波、高潮及び洪水氾濫の危険性を大きくしている。そこで、平成6年より(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部の「湾域都市の水防災研究委員会」として3年計画で発足し、水防災のあり方について検討することになった。その初年度の1月に阪神・淡路大震災が発生した。これを起こした兵庫県南部地震は、右横ずれ断層運動で、震源域で上下方向に50から60pの小さな食い違いであり、しかもその海域の平均水深が60から80mと浅かったので、津波はほとんど発生しなかった(たとえばポートアイランド沖の運輸省の波高計の解析では約5p)。この地震では液状下によって,淀川河口左岸堤防が約2qにわたって平均約2.5mも沈下し、その最大部では満潮時に堤防天端までわずか50pしか残されていないという浸水被災まで間一髪の状況であった。この事実は、来るべき南海地震津波がそれほど大きくなくても、地震によって海岸、河川構造物が被災すれば、大阪の臨海低平部は、津波に対して極めて危険であることを示したものと言える。
阪神・淡路大震災は、津波の問題も含めて、これからの大阪湾域での水災害、とくに複合的に起こる事例に対する多くの教訓を私たちに与えてくれたと考えられる。そこで、本委員会では、阪神・淡路大震災の危機管理のあり方を検討して、ハードウェア、ソフトウェア及び情報の三者からなる総合的な水防災システムを提案しようとした。
その検討課題は、以下のようである。
(1)水災害として具体的に2050年までには発生が確実視されている南海地震津波に対して、大阪湾ベイエリア、とくに湾奥に位置する大阪では、都市災害として大きな被害の発生が憂慮されている。そこで、まず委員会の構成メンバーが、ブレーンストーミングを通して、阪神・淡路大震災で被害が拡大した原因を解析し、その結果から防災構造物などのハードウェア、人命救助やロジスティクスなどのソフトウェア及びそれらの効果を発揮させる情報の、これら三者の組合せによる総合防災システムを構築することが基本であることを提案し、その具体的内客を示す。
(2)2050年までに、最悪の場合、東海、東南海、南海地震がほぼ同時的に発生した場合(歴史上2回経験している)、地震マグニチュードは8.6に達し伊豆半島から四国、九州にかけての沿岸部では津波が襲来する。震度が5を超え、災害対策本部が設置される府県は、東は神奈川県から西は鹿児島県まで、20以上に達すると予想される。このような広域災害では、現在、近畿地方の多くの自治体で見直している地域防災計画が不十分であることは自明であり、隣接自治体などからの応援も期待できず、多くの自治体の孤立化が必定であろう。このような広域災害に対処するには、どのような防災システムが必要であるのか。
(3)東海、東南海、南海地震のほぼ同時発生による広域的な地震・津波被害の発生は、海上からの迅速な救援も不可能であり、未曾有の人的・物的被害の発生が予想される。近畿地方を中心とした自治体の地域防災計画では、被害は隣接の自治体幸含む広域的なものになるとは必ずしも想定しておらず、最悪の場合、近畿2府5県が同時被災という事も起こり得る。被害発生が地域的に限定される直下地震対策では到底対処できない事態をここでは想定しており、起こり得る低頻度巨大災害に対してどのような観点からの防災を考えるべきか。
プレート境界型の南海地震は21世紀の半ばまでに必ず起こり、津波災害が発生することは間違いない。いま残された時間は最大50年ほどである。本委員会は、この問に私たちの社会がどのような準備をしなければいけないかを検討する基礎的な情報を提供できることを意図して、3年間にわたる調査研究活動を行った。本報告書はその成果であり、その間にご支援いただいた建設コンサルタンツ協会近畿支都並びに会員各位、そして本委員会のメンバーの皆様に心よりお礼申し上げる次第である。なお、蛇足ながら本委員会はその研究成果をもって、平成8年度行われた「防災救命テクノ」コンペ(建設省近畿地方建設局)に応募し受賞(佳作)しました。その内容は「防災テクノブック」に掲載されていることをご報告いたします。
平成9年3月
湾域都市の水防災研究委員会
委員長 河田恵昭
委員名簿
1 |
京都大学 防災研究所 |
河田恵昭 |
2 |
大阪市立大学 工学部 土木工学科 |
小田一紀 |
3 |
京都大学大学院工学研究科環境地球工学専攻 |
禰津家久 |
4 |
椛蝸ム組本店 土木工事計画部 |
杉山和久 |
5 |
鹿島建設 関西支店 土木部設計課 |
吉田 潔 |
6 |
近畿技術コンサルタンツ 技術部 |
小野 隆 |
7 |
褐F谷組 大阪支店 土木部 技術課 |
中岡史男 |
8 |
褐嚼ン技術研究所大阪支社河川本部水・計画部 |
佐藤雅洋 |
9 |
褐嚼ン技術研究所大阪支社河州本部技術第 3部 |
杉浦正之 |
10 |
褐嚼ン技術研究所大阪支社河川本部水・計画部 |
杉山 裕 |
11 |
国際航業 関西技術所 海洋部 設計課 |
西岡陽一 |
12 |
清水建設 大阪支店 土木技術部 |
古川幹夫 |
13 |
鰹C成建設コンサルタント 水工部(分室) |
井畑英男 |
14 |
中央復建コンサルタンツ梶@第四設計部 |
春日光昭 |
15 |
鞄結梃嚼ンコンサルタント 関西支店 |
瀧原 勇 |
16 |
鞄血コンサルタンツ 大阪支店 技術第一部 |
池口 進 |
17 |
東洋建設 大阪本店 土木部技術課 |
松永博史 |
18 |
鞄建設計 土木設計事務所環境計画部 |
高橋 正 |
19 |
鞄建設計 土木設計事務所環境計画部 |
佐竹康孝 |
20 |
日本技術開発椛蜊緕x社 水工部 |
新池 亨 |
21 |
日本建設コンサルタント梶@大阪支社 |
工藤徳人 |
22 |
鞄本港湾コンサルタント 神戸事務所 |
北浦胤亮 |
23 |
潟jュージェック 水工部 河海調査室 |
殿最浩司 |
24 |
パシフィックコンサルタンツ 大阪本社 |
小部直人 |
25 |
パシフィックコンサルタンツ梶@大阪本社 |
熊谷健蔵 |
26 |
パシフィックコンサルタンツ梶@大阪本社 |
松井 弘 |
27 |
不動建設 大阪本店 土木技術部 |
浅田承扶 |
28 |
三井共同建設コンサルタント梶@関西支社技術部 |
成田和人 |
29 |
八千代エンジニヤリング梶@大阪支店技術第 3部 |
妹尾嘉之 |