「自然調和型漁港づくり」整備事例

鞄本港湾コンサルタント関西支社  ○ 川嶋 憲

同上           中村秀一

論文要旨

 従来の沿岸域における社会資本整備は、陸域での利用面や防災面といった機能性のみを重視した開発が進められてきたが、近年では自然環境保全等の社会的要請をうけて自然との共生を目指した事業が数多く展開されている。漁港整備においても、水産政策の基本として「水産資源の持続的利用と安定的な水産物供給体制の確立」が掲げられており、その整備手法のひとつとして水産庁が推進する「自然調和型漁港づくり推進事業」がある。本稿ではモデル事業として実施された兵庫県丸山漁港における整備事例について、計画から設計、事後調査(モニタリング)までの概要を紹介する。

 整備内容は、漁港施設用地造成のための公有水面埋立に伴って消失する良好な藻場を、ミチゲーションの代替措置の考え方に沿って、同時に整備する防波堤構造物に3タイプの工法による藻場機能を付加し、藻場の再生を試みた整備事例である。現在のところ埋立護岸や防波堤等の外周施設のほとんどが概成しており、計画防波堤が築造されて約3年以上が経過した時点での途中経過であるが、毎年実施しているモニタリング調査により良好な藻場の再生状況が明らかになっている。

 

キーワード

自然調和型漁港,藻場の再生,モニタリング