本業務は、防潮鉄扉(陸閘)の耐震対策検討を行ったものである。津波シミュレーションの結果等を用い、防潮鉄扉の類型化を試行し、その結果をもとに安全性の判定を行った。防潮鉄扉直下および周辺地盤は、大地震時に液状化を生じる可能性が高いことから、特に危険度の高い鉄扉について、液状化による地盤変状を考慮できる有効応力解析手法を用いて、2次元FEMモデルによる地震応答解析を行い、耐震性能の検討を行った結果を報告するものである。
防潮鉄扉,耐震対策,津波対策,二次元FEM地震応答解析,東南海地震 |
設計当初は、クレーンによる一括架設することを前提に詳細設計が終了していた鉄道橋について、架設現場周辺の住宅環境の変化に伴い、大型クレーンを設置する施工ヤードが確保できなくなったため、桁の架設方法を送り出し架設に変更した。また、本稿は、高架橋上の営業線と併走し、その営業線を乗り越える分岐線の橋梁であることから、線形、構造物の設置あるいは施工条件について数々の制約を受ける。上述のような橋梁について、架設方法を考慮して、構造性、施工性、安全性、周辺への環境に配慮した橋梁形式を再検討し、詳細設計を実施した。本橋の構造形式は、平面線形R=600mの曲線中で下り勾配I=24‰に沿って送り出し架設することから、架設時の施工性、安全性に配慮して、設計当初の合成桁から鋼下路RC床版桁に変更した。詳細設計では、本橋は営業線直上の橋梁となることから、耐久性の向上を図る構造の考察、大地震(L2地震)に対する安全性の確保、景観、維持管理への配慮を行った。
架設方法の変更,鋼下路RC床版桁,大地震(L2地震),景観,維持管理 |
平成7年の兵庫県南部地震以降、既設橋脚の耐震補強の設計施工が全国的に行われてきた。一本柱橋脚の補強範囲は一般的に梁下から柱基部までの範囲が行われてきた。しかしながら、河川を横断するような橋梁では、柱基部まで補強を行うために、大規模な締切工などが必要となり、仮設費のコスト増、治水の面での安全性などが課題として指摘されている。そこで本論文では、大規模河川の堤防に立つ柱部の2/3程度が土中にある橋脚の耐震補強を、柱地中部の「地盤ばね」を評価した設計について報告するものである。
耐震補強, 動的解析 |
本稿は、完成3車線から暫定2車線への構造変更に係わる構造検討業務において、橋梁上部工の全体解析における概要を報告するものである。当該上部工は<6径間連続PC2主版桁橋+3径間連続鋼2主鈑桁橋+7径間連続PC2主版桁橋>の3橋全てが接合された鋼・コンクリート混合橋梁であり、橋長が490mと長いため、施工手順によってはPC桁部のクリープや乾燥収縮および接合部のPCケーブル緊張にともなうプレストレスの影響が、鋼桁部へ大きく作用することになる。その影響を極力小さくするため、架設手順ならびに現場継手構造の見直しを行い、全体解析に反映させたものである。
混合橋梁,複合構造,クリープ,乾燥収縮,プレストレス,温度変化 |
本橋梁は、砂防河川を横断し、町道に取付く橋長142mの鋼3径間連続合成開断面箱桁橋である。架橋地点の地形・地質的特徴は、近傍にA 級の活断層である中央構造線が分布すること、洪積世の砂礫層を支持層とすること、両橋台計画箇所が段丘崖に近接すること等が挙げられる。特に、A1橋台計画箇所は明瞭な滑落崖を有する崩壊地形が認められ、これに平行する低速度帯の分布が弾性波探査によって確認された。本論文は、基礎の設計上問題となる、これらの特性を有する地盤上に橋台を計画するために行った検討項目について報告するものである。主な項目は、次のとおりである。@地盤評価のために行った地質調査、A地盤評価を踏まえた最適な橋台位置の決定と基礎形式の選定
低速度帯,ゆるみ域,PS検層,深礎杭基礎 |
既設の鋼製立体ラーメン橋脚のレベル2地震動に対する耐震性能の照査を実施した。対象構造を3次元フレームにモデル化し、コンクリート充填部と充填部の材料的非線形性を考慮した時刻暦応答解析を実施した。柱基部および隅角部の剛域近傍断面に着目した耐力,および残留変位に対する照査を行った。また落橋防止対策として、支承部への制振装置の設置効果に対する検討を行った。
鋼製立体ラーメン橋脚,非線形動的解析,ファイバーモデル,落橋防止対策,制振装置 |
近年,ゴム支承は,レベル2地震動に対する過大な上部構造変位に追従する機能と活荷重たわみによる上部構造の回転に追随する機能を共に満足する必要があるため大型化する傾向にある。これに対して,機能分離型支承は,鉛直支持機能と水平力抵抗機能とを分離させることによって支承を小型化することが可能となり,コスト縮減につながることから注目されている。本報告は,多径間連続高架橋の支承形式選定において,コスト縮減ならびに振動・騒音の要因となる桁遊間の縮小を目的として,支承形式の違いが地震時支承移動量等,橋梁の振動特性に及ぼす影響について比較検討した結果を述べるものである。
機能分離型支承, 地震時水平力分散ゴム支承,免震支承,非線形動的応答解析,レベル2地震動 |
RC橋脚の耐震補強においては、大規模地震を想定し設計されるため、じん性の向上を図った補強だけでは照査を満足できず、アンカー鉄筋を配置し、耐力の向上を図り対処せざるを得ない場合がある。橋脚の耐力の向上は、基礎を初めとする他部材への悪影響が考えられ、その影響を評価するため、補強後の橋脚全体系の破壊メカニズムを把握することが重要となってくる。本報告は、急峻地形におけるラーメン橋脚を一例にとり、杭及び地盤抵抗を直接モデル化した解析モデルにより非線形動的解析を実施し、橋脚の耐震補強が基礎へ与える影響を検討したものである。
耐震補強,ラーメン橋脚,動的解析,深礎杭 |
本報は,河川を横断する5径間ゲルバー鈑桁橋(うち3径間は連続)について,橋梁構造の各々に対する個別耐震対策ではなく,橋梁構造の全体をとらえた耐震対策にて地震力に抵抗させるため,支承の免震化,ゲルバー構造部の連結化を検討した結果を報告するものである。本橋の耐震対策として各橋脚それぞれに橋脚補強を施した場合,現況支承条件では固定橋脚への地震時慣性力の負担が大きいことから,固定橋脚補強規模が過大となり基礎に悪影響が及ぶことが判明した。そこで,免震橋梁化により上部工慣性力を各橋脚に分散させて各橋脚に相応の補強を施すことにより固定橋脚に過大な地震力の負担を強いていた構造から,各橋脚が相応の地震力を分担しうる構造へと改良させることができた。免震橋梁化によりゲルバー部(可動支承)にて支承の移動可能量が超過する問題が生じたが,現況においてゲルバー構造部には落橋防止システムが設置されていないことから,落橋防止対策も兼ねてゲルバー構造を連結し,5径間連続鈑桁橋へと改造した。
免震橋梁化,ゲルバー構造連結連続化 |
共同溝本体構造物耐震設計の統一的基準として、「共同溝設計指針/昭和61年3月/(社)日本道路協会」が挙げられるが、同基準は、兵庫県南部地震以前に整備されているため、レベル2地震動に対する耐震設計手法については確立されていない。このため、共同溝本体の縦断方向に対して、応答変位法を用いたはりバネモデルによる非線形解析を実施し、共同溝本体と地盤との連成挙動の把握を行い、目地遊間設定、構造物急変部の断面力算定、地盤条件変化部の断面力算定、継手タイプ選定等の妥当性を検証した。
開削,共同溝,耐震設計,地下構造物 |
近年、建設業界においては循環型社会の形成促進を目指し、建設副産物のリサイクルや既存ストックの有効利用などの施策が積極的に進められている。本橋は、河川を渡河する鋼箱桁形式の歩道橋(2径間連続鋼箱桁橋+3径間連続鋼箱桁橋+2径間連続鋼箱桁橋;96.35+154.8+86.35=337.5m)である。竣工から20年程度と比較的新しく、外観にも目立った損傷が見当たらない。本橋は、併設する車道橋の架け替えに伴い、撤去計画が進められている。撤去後については、従来のように解体・処分するのではなく、先に述べたように橋体の健全度が高いことから別橋梁への再利用が求められている。ここでは、既存橋梁を再利用する際の構造的な課題を考慮した最適な選定方法を述べ、再利用することによるコスト縮減効果を示す。
リサイクル,コスト縮減,歩道橋,鋼箱桁橋 |
ポータルラーメン橋は,コンクリートの上部工と橋台を一体化したラーメン橋で,従来から中小支間の単純桁橋に適用することで,ラーメン構造化による断面力の低減と支承・伸縮装置・落橋防止システムといった付属物が不要であることから,経済性・走行性・耐震性能の向上等の効果をあげている.鋼ポータルラーメン橋とは,このポータルラーメン構造に鋼上部工(鋼鈑桁)を適用することによって,鋼単純桁橋における更なる経済性・耐震性能の向上を期待するものである.一方,鋼コンクリート複合構造では,鋼桁からの断面力を合理的に下部工へ伝達するため,鋼部材とコンクリート部材との接合方法が設計的課題として挙げられる.本稿では,鋼ポータルラーメン橋の中でも実施例の少ない鋼二主鈑桁とRC橋台を一体化した複合ポータルラーメン橋の計画・設計概要と,本構造を採用したことによるコスト縮減効果および設計における課題解決について報告する.
複合構造,上下部一体構造,孔明き鋼板ジベル,コスト縮減 |
高含水比の腐植土及び粘性土からなる軟弱地盤上に、10mの盛土厚で施工された国道バイパスの盛土区間において、供用後10年以上経過した現在も沈下が継続している。また、盛土内を横断する3基のボックスカルバート(以下、C-BOXという。)についても、盛土の沈下に追随しながら不同沈下が進行し、本来の機能(道路通行、排水処理等)が確保できない状況に至っていた。このため、沈下の原因究明と今後の沈下挙動の予測、機能確保に向けた対応策の策定が必要となった。本論文は、不同沈下したC-BOXについて、その機能復元を目的とした解析・検討事例と施工結果を紹介するものである。
軟弱地盤,不同沈下,二次圧密,C-BOXの機能確保,復元工法 |
国内の長大吊橋には鋼製主塔が採用されてきた。この主たる理由は、コンクリート製主塔には耐震性能上および施工上に課題があったためである。しかしながら、近年の耐震設計方法ならびに施工技術の向上、さらには使用材料の高強度化により、経済性、維持管理面で優れるコンクリート製主塔の適用性が考えられるようになってきた。そこで本論文では、中規模吊橋におけるコンクリート製主塔の耐震設計を実施し、コンクリート製主塔の適用性を確認した。またさらに、鋼・コンクリート複合構造形式が従来形式より合理的であることを示した。
吊橋,コンクリート製主塔,要求性能,複合構造 |
阪神・淡路大震災で被災した鉄筋コンクリート製地中構造物の被害事例の解析的分析を通じて,構造物の耐震性能評価の観点から鉛直地震動の影響について考察を行った.とくに,当該地点においては地震動の観測記録が得られていないことから,当該地点を対象とした複数の推定地震動を用いて,地盤・構造物連成系の非線形地震応答解析を行い,鉛直地震動の有無による変形,断面力,損傷形態等の相違を検討することで鉛直地震動の影響を評価した.
鉛直地震動,地中構造物,耐震性能,動的解析 |
連続立体交差化工事の取付部においては、狭隘な鉄道用地(借地)内で列車を運行させながら線路の切換や構造物の構築をせざるを得ないケースがある。奈良高架関西線の場合、仮線の軌道扛上量が1.7mと高く、又仮線と計画線の平面位置が競合しているため、現在線・仮線・計画線全体の切換順序を把握した上で、的確な構造計画と施工を配慮した設計が不可欠である。本稿は、詳細設計の段階において構造検討を行った結果、仮線側にタイロッド土留形式、計画線の両側にRRR−C工法(ラディッシュアンカー)及びRRR−B工法(ジオテキスタイル)を複合した補強土擁壁を採用したことで課題を解決した経緯、及び補強盛土擁壁の設計上の検討事項等を報告する。
タイロッド式矢板壁工法,地山補強土工法,補強盛土工法,線路切換,軌道扛上 |
兵庫県南部地震以降、大規模地震動に対するL2照査が導入され、耐震検討が行われている。本設計対象である取水ボックスカルバートは、取水塔から浄水場に原水を供給する重要なライフラインであり、大規模地震時にも取水機能を確保する必要がある。現況照査の結果、耐震耐力が不足し、補強が必要と判断した。補強工法は、取水機能、耐震性能の確保及び施工条件を満たす「馬蹄形鋼管内挿工法」を採用した。
水道施設,取水施設,既設ボックスカルバート,耐震補強,馬蹄形鋼管 |
都市内高速道路を半地下化にした掘割構造物は、都市部での大規模土木工事となることから、経済性、施工の合理化による工期短縮、施工時の周辺環境に対する騒音・粉塵対策等の配慮が求められる。そこで、コスト縮減、環境負荷の低減の観点から、剛性の高い鋼管矢板を土留工として打設し、切梁を無くし掘削効率を高めて施工する頂版先行施工法(逆巻き施工法)を採用し、その施工性、耐震性能を確認してきた。本稿では、鋼管本体利用工法の適用性を、切梁方式による仮設分離工法も含めた比較検討で確認するとともに、側壁と頂・底版の接合部である隅角部構造の模型載荷試験及び耐震性能を含めた構造検討について報告する。
掘割構造,半地下構造,仮設本体利用,逆巻き施工,鋼管・コンクリート合成構造 |
平成15年10月の車両総重量の見直しにより,総重量44トンを上限とする車両の走行が可能となった。これに伴い,港内における比較的重車両の交通量が多く,重要度の高い既設橋について,試験車両を用いた静的載荷試験を実施し,計測結果と解析により得られた結果を比較し,44トントレーラーが走行した場合における既設橋の耐荷力照査を実施した。本報告では,静的載荷試験の実施方法,計測値の解析への反映方法を紹介し,44トントレーラー荷重の解析結果による既設橋の安全性評価について報告する。
実橋載荷試験,耐荷力診断,既設橋 |