中華人民共和国(以降、中国という)における住宅地等の開発は、各デベロッパーの販売戦略のもとアメリカ風やヨーロッパ風などといった、自己主張が強く、ともすれば奇抜な印象を受けるものも多い。 これらに対し、われわれは、地域の自然や生活・文化に根ざした地域になじむデザインを重視し、それらの地域らしさをデザインに取り入れることの重要性をクライアントに説いてきた。 本論文は、中国の国内博覧会である第6回中国花卉博覧会のサブ会場の計画及び関連計画を主な題材として中国における計画手法の特徴とわれわれが計画する上で重点を置いている事柄についてまとめたものである。
近年の社会資本整備では、事業の早期供用、整備効果の早期発現が叫ばれる中、 事業の構想段階から住民・利用者との合意形成を図り、事業を円滑に実施していくことが重要視されている。 本稿は、高規格幹線道路の一部である「新規路線」の計画策定に向け、 事業の構想段階に民意を反映することを念頭におき、@路線選定に民意の反映させるため、 住民・利用者の意見・要望を取り入れた比較ルートの立案、 A沿道住民・利用者の「新規路線」への理解促進のため、 地域の実状に即した身近で定量的な評価の施行を実施し、 今後の関係機関・地元協議における合意形成を促進させるための有用な基礎資料として取りまとめたものである。
鉄道施設の中でも延長が長く重要な構造物であるトンネルでは、構造物の維持管理と鉄道施設の安全運行に関わる建築限界の確認を定期的に行なっている。 本文では、鉄道施設管理で行われるトンネルの建築限界を、デジタルカメラと基準定規にて計測および確認する手法を開発したので、その結果を報告する。本手法で使用する機器は、デジタルカメラおよびパソコン、そして写真計測に必要な基準定規からなる。基準定規は、寸法が既知である測点を立体的に配置したターゲットとレーザー照射器からなる。 本計測手法の確立にあたり理論検討を行い計測誤差をなるべく生じさせない工夫を施した。また、装置の試作機およびソフトウエアを製作し、トンネルにて精度確認を行った。これらの結果、精度よく計測できることが判明した。
平成12年6月に施行された大規模小売店舗立地法は、まちづくりの観点から商業をとらえ直し、新しい商業政策への転換を行うためのものであった。計画段階における関係行政機関の意向反映を実現し、大型商業施設の立地によって引き起こされる交通渋滞や都市機能への悪影響を防止することは、同法の重要な目的の1つであり、商業施設の大規模化が年々進行する中で、同法による商業施設の計画調整は、地域のまちづくりにおける重要な要素となっている。 本論文は、ある地域における大型商業施設の誘致計画に基づき、計画地域の特性を踏まえた誘致施設の業種選定を行うとともに、誘致施設によって誘発される発生交通量によって、地域に交通渋滞などの悪影響を生じさせないための交通処理計画を実施したものである。
本稿は、都市の景観を構成する大きな要素である建物の高さ規制を検討する場面において、CG・VR技術を活用した景観シミュレーションの事例を示し、景観評価における有用性について検討したものである。事例として京都市の都心部をとりあげ、特に、大都市固有の課題ともいえる高度利用と歴史的な町並みとの調和を目指した高さ規制のあり方を検討した。はじめに、GISデータから取得した建物の形状データをCAD・CG系ソフトで加工し、景観シミュレーションを行うための建物の三次元モデルを作成した。次に、作成した建物の三次元モデルをVR系ソフトに読み込み、様々な視点からの景観検証を行うことで、地域の景観特性に配慮した建物の高さ規制の検討が可能であることを確認した。
滋賀県彦根市の県立盲学校近隣において、視覚障害者の安全で快適な歩行を支援するため、赤外線を用いた音声案内システムを設置した。主要な施設への経路を案内する社会実験を実施して、システムの有効性などについて検討した。本論文では、2年間にわたり実施した社会実験の内容や結果などを紹介する。
本稿は、世界遺産「高野山」へのアクセス道路である国道480号について、その道路整備計画検討を実施するにあたり、地域の意見を反映させるため取り入れたPI(パブリック・インボルブメント)について述べるものである。国道480号は、昭和35年の開通時そのままの線形を残しており、現在の道路構造令に準拠していない。また、高野山と同じく世界遺産に登録された参詣道「高野山町石道」と並行・交差しており、世界遺産に相応しい道づくりが求められている。さらに、高野龍神国定公園に指定されるなど、整備にあたっては、自然環境に十分な配慮が必要となる。これらを考慮すると、地域の価値観を十分に把握することで、「振興」と「保全」のバランスのとれた道路整備計画が完成すると考え、PIの導入を行ったものである。
本稿は、愛媛県西条市と高知県いの町を結ぶ国道194号に位置する寒風山道路において、学識経験者ヒアリングを通じ、中山間地域の寒風山道路の整備効果の把握ならびに地域活性化に向けた利用促進策を検討した。整備効果の把握にあたり、行楽シーズンにおける交通需要の把握、地域住民・企業・観光施設等への飛び込みヒアリング及び寒風山道路の供用に最も影響を受けているいの町(旧本川村)住民意識調査の実施、更には国内外の類似事例の収集により、寒風山道路として適用可能な評価手法を整理した。また利用促進策は、寒風山道路関する情報発信や西条市といの町の地域交流を図る場としてゲストスピーカーを招き、自治体や地域住民を主体とした意見交換会の支援を行うと共に、広報資料作成として地域住民の意見を反映した観光ロードマップのリーフレット、ならびに寒風山道路の歴史や周辺住民の活動、更には寒風山道路の整備効果、ロードマップをとりまとめた寒風山道路物語を作成した。