排水性舗装の機能劣化を改善するための多孔質弾性モルタル充填舗装は、路面凹凸の改善、吸音性能向上、目詰まり防止などの効果が期待されている。今回、都市高速に本舗装の施工を行い、施工直前・事前処理直後・施工直後において一般車道路交通騒音および試験車走行騒音の測定を行った。また、施工16ヶ月後に一般車道路交通騒音の測定を行い、騒音低減効果の経年変化を把握した。 これらの測定結果から、排水性舗装へ多孔質弾性モルタルを充填することによる付加的な騒音低減効果は約2 dBであり、排水性舗装の卓越周波数である500〜800 Hzの周波数帯域で音圧レベルの低減が大きく、オールパスの低減に寄与していることを確認した。また、施工16ヵ月後には、施工直後と比較して騒音低減効果が約1.3 dB低下していることを確認した。
地域の動植物やすぐれた自然景観などを保全・活用するため、住民ワークショップや環境学習等によって保全対策の方針を定める場合を想定し、自然環境保全の優先度を示した図「自然環境保全優先度マップ」を、GISによって作成する手順を考案した。この手順では対象区域内の価値ある自然、自然環境の存続の危うさにそれぞれ点数を与え、点数の総和を保全優先度とする。本手法の特徴は、「保護すべき場所」および「利用に適した場所」の方針ごとにそれぞれ保全優先度が決定されることである。
高知県では、平成15年度より「水源のかん養をはじめ山地災害の防止、気候の緩和、生態系の多様性の確保等県民のだれもが享受している森林の公益的機能の低下を予防し、県民の理解と協力のもと、森林環境の保全に取り組むため」森林環境税が導入された。 本検討は、このような森林に関する取り組みがなされている中、森林が果たす洪水緩和機能及び水資源涵養機能を解明することを目的として、実施したものである。 解析対象流域は、全国でも先駆けて昭和30年代より、大規模な植林が行われてきた物部川流域(永瀬ダム上流域)とした。永瀬ダム上流域は、流域面積が295km2あり、面積の約91%を森林が占める流域である。
建設リサイクル法における特定建設資材のうち、建設発生木材の再資源化等率が低迷している。本研究は、神奈川全県の建設発生木材を対象とし、環境と資源を考慮した総合的リサイクル実施のための総合システムモデルを構築し、各種施策や新技術を適用した場合の効果予測と評価を行ったものである。具体的には、神奈川県における建設発生木材のマテリアルフローの予測モデルを作成し、現状推計を試みた。また、建設発生木材のリサイクルを拡大するための複数シナリオを検討するとともに、ライフサイクルCO2排出量を指標としたシナリオの環境評価を行った。分析の結果、建設発生木材のカーボンニュートラル特性を反映して、大規模なサーマルリサイクル事業を想定するシナリオが環境上優位となる傾向があることが分かった。ボード製造をはじめとするマテリアルリサイクルにおいては、再生ボード製造時のエネルギー消費が大きく、バージン資源由来のボードを代替する効果はあまり期待できない結果となった。
本橋梁は、市街地を通過する橋長93.1mの3径間単純鋼合成鈑桁橋である。本橋は、沿道家屋と極めて近接しており、地元住民からは振動騒音等に対して改善要望が寄せられていた。また、緊急輸送道路である本路線は、大規模地震に対する震災対策が進められており、本橋においても耐震補強を実施する必要があった。 このため、近隣住民からの要望を踏まえ、橋梁の振動低減にも効果的な耐震補強工法として、上部工と下部工を一体化させる構造を採用し、耐震性の確保と同時に近隣住民の生活環境の改善を図った。このたび耐震補強工事が完了し、補強後における振動騒音等の低減効果を確認した結果について報告する。
本実験は、河口付近の引堤(汽水域わんどの設置)による干潟の再生状況に関して検討を行ったものである。河川の流量変化はもとより、潮汐・波浪の影響も受ける複雑な条件下の当該区間で、どのような河床の変動を生じるのかを把握するとともに、当該地点に適したわんど形状を設定することを目的とする。実験では掃流砂、浮遊砂の双方を、比重の小さい軽量材料を用いて再現した。掃流砂実験では、@洪水時にわんど下流護岸に水衝部が発生するとともに、わんど前面の河川内に著しい堆積が生じること、A改良案として、わんど開口部に導流堤を設置するのが効果的であったこと、等が明らかとなった。また、B浮遊砂はわんど内にほぼ均一に堆積すること、C波浪によって水位変動や振動流が河川内に伝播することはないが、河川水位をせき上げる形で影響すること、等が明らかとなった。
滋賀県では平成元年から多自然型川づくり河川として、野洲川の二次支川である大原川で親水、景観、水辺空間、動植物環境の保全等を考慮した工法により整備を行ってきた。そこで本検討では、工事の完了より10年以上が経過した箇所もあることから、多自然型川づくりの成果を評価することを目的に、評価手法の検討及び現状把握調査(治水・利水・利用・環境)を行い、大原川における多自然型の川づくりについての評価を行った。評価に当たっては小河川であること、事業実施前の生物の生息情報がないこと、一期一回の調査データを用いること、などを踏まえてその視点について検討を行った。最後に、今回の調査結果から得られた知見を元に、現状の評価を行い、環境修復の必要な状況についてはその改善手法の提案を行った。 なお、調査結果・評価検討については誌面の関係上、一部を割愛してとりまとめを行っている。
本研究では、ヒートアイランド対策の推進に向け、大阪府の地表面温度を測定し、熱負荷の特性を図示した熱環境(熱負荷特性)マップの作成を行った。はじめに、「大阪府ヒートアイランド対策推進計画」(H16.6)に示される優先対策地域を中心とする約1000km2の地表面温度を、航空機搭載型熱赤外線センサー(TABI)を用いて測定した。測定温度は、測定時間の差に伴う較差、および大気の影響に伴う誤差を含んでいるため、測定コース間の補正、および大気補正を実施して熱画像を作成した。次に、測定された地表面温度データ以外に、ヒートアイランドの主な要因である人工排熱、土地被覆、建物用途・形態のデータを用いて1kmメッシュデータを整備し、主成分分析とクラスター分析を適用して、地域の熱負荷の特性を類型化した熱環境(熱負荷特性)マップを作成した。熱環境(熱負荷特性)マップは、地域の熱負荷の特性と大きさの程度を図示したものであり、今後、地域に適したヒートアイランド対策を検討する上での基礎資料となる。
二級河川大津川水系松尾川の河川改修に際して流下能力向上のため、ショートカットが実施される地区において、その旧川部及び残地を活用したビオトープ整備が計画された。計画対象地域である大阪府和泉市春木町は、良好な自然が残る上流部と都市化が進む下流部の中間に位置し、将来にわたって良好な自然環境を保全することが重要と考えられる地区である。また、春木町内には公園・広場が無く、地域住民のやすらぎの場を提供するという側面から、自然環境と人が利用する空間の両立が求められた。住民の意見や要望は、住民の代表者による会議開催や住民へのアンケート、水辺の学校の開催などを通して収集し、計画に反映させるように努めた。なお、計画と同時平行でビオトープの荒造成を実施したため、住民に事業が進んでいる様子を示すとともに、今後の維持管理や植栽計画を決定するに当たり、住民はその具体的なイメージを把握できているものと考えている。