我が国は、経済の成長に伴い地方部から都市部に人口が集中し、都市部の交通量が増大した結果、資産の集中が生じた。この結果、主要道路と道路または鉄道が平面交差する箇所、また立体交差している箇所でも車線数が一般部よりも少ない箇所や建築限界が確保されていない箇所などが、ボトルネック構造として交通容量を低下させている。これらボトルネック箇所については、対策として立体交差工事が実施されているが、これらはいずれも狭隘な用地の中での施工といった厳しい制約条件を強いられている。 近年、自己充てん性高強度高耐久コンクリートや高強度鉄筋が開発され実用化されつつある。この使用により厳しい制約条件下でも施工可能なRC構造物を設計することが可能となってきている。 本報では、鉄道との立体交差箇所での拡幅工事において、この自己充てん性高強度高耐久コンクリートを採用し、非常に狭隘な施工空間で立体交差化を図った事例について紹介する。
一般国道158線は、福井県と岐阜県を結ぶ動脈道路であると同時に、緊急輸送道路にも指定されている。福井県 大野市 長野地先 における平成17年12月の降雪は、1984年における過去最大観測である188cmを大きく超えた241cm(九頭竜にて観測)の積雪深となった。12月における最大積雪深を更新したことと、すり鉢状で急峻な地形があいまって、大規模な雪崩が発生し尼頭1号橋梁の側面に直撃した。 本橋は、鋼単純合成桁であったため主構造と床版剛性の縁が切れる事に起因する剛性の低下が懸念された。本論文では、雪崩を被災した尼頭1号橋の供用開始までの「損傷調査・静的載荷試験・供用開始の判断・橋梁補修(復旧)設計」までの一連を報告する。
衝撃振動測定は鉄道高架橋において構造物の健全度判定に幅広く用いられている。測定では固有振動数の特定が容易な構造物もあれば、困難な構造物もある。事前に固有振動数の特定が困難な構造物を把握しておくことは、計測作業を効率的に進める上で非常に有効である。 本稿では、当社が新設構造物の初回全般検査として実施した衝撃振動測定結果をもとに、固有振動数特定の難易度判定方法を提案するものである。
近年の厳しい財政環境下にあって必要な建設事業の推進に際しては、従来の技術レベルを超えた一層のコスト縮減が課題となる。一方で、安全で安心な社会基盤施設の構築のため、兵庫県南部地震以降、地震に対する構造物の安全性確保がより一層強く求められている。このような背景のもと、耐震性・経済性に優れた形式として上部工と下部工を剛結化するラーメン構造形式橋梁の採用が多くなってきた。 上下部剛結構造の採用実績については、陸上橋でベント架設や送り出し架設が可能な橋梁においては、実績は増えてきているものの、海上橋でフローティングクレーンによる大ブロック架設(以下,FC架設と呼ぶ)を行う橋梁においてはほとんど見当たらない。 本稿では海上部に建設される鋼3径間連続鋼床版箱桁ラーメン橋における鋼桁とコンクリート橋脚の剛結構造を対象として、FC架設に対応できる構造を提案し、その細部構造に対して解析的検討を加えた設計例を報告する。
構造物の梁・柱接合部が箱形薄肉断面梁と鋼製円柱で構成される場合は、応力分布が複雑となり、腹板のせん断変形がフランジにおける直応力に影響を及ぼし、断面内応力分布が一様とならず、腹板との接合点に近いほど応力が大きくなる、というせん断遅れ現象を考慮した断面照査を実施する必要がある。 本検討は、下フランジ下面が露出する箱形梁とCFT柱で構成された隅角部を対象に、せん断遅れの誘発要因である応力集中と座屈を避ける構造細目を採用することにより、「せん断遅れを考慮しない鋼断面」としての設計手法の妥当性について、三次元弾性FEM解析で検証を行い、その構造改善効果を確認した。
トンネル構造物の維持管理に3Dレーザスキャナを用いることにより変状の分布状況や進行状況・累積性を定量的かつ客観的に把握し、信頼性の高い評価手法を確立することを目的として、実トンネルにおいて3Dレーザスキャナによる計測・スキャンデータ解析を実施した。 具体的には、まず、1時期のスキャンデータを用いて「断面形状把握」「変状の分布(亀裂,剥落)把握」「亀裂の開口量・段差量の把握」を可能とする計測仕様(レーザの入射角や計測密度)を標準化し、次に、実トンネルにおいて2時期の繰り返し測定を行い、結果を管理台帳へ反映させ「変状の累積性・進行性の評価」が可能な技術として確立させた。 実際の近接施工の現場に適用した結果では、3Dレーザスキャナにより0.5o以上の亀裂は抽出できることが判明した。 近年、種々の(計測の仕組みや計測誤差の異なる)3Dレーザスキャナが市販されており、機器の特性・計測の目的を理解した上で、トンネルを中心とした鉄道施設の維持管理に利用していくことにより、客観的かつ定量的な構造物の維持管理の実現に有効であろう。
兵庫県養父市の国道9号線 矢井原橋はPC有ヒンジラーメン橋であり、ヒンジ部における車両走行時衝撃音の解消および、たわみ抑制の課題を背景に、車両の大型化対策・幅員拡幅・耐震補強を施すため、桁下にコンクリートアーチを構築し、橋梁の構造系変更を伴った補強設計を実施した。本橋は、交差条件よりヒンジ直下へ橋脚を設置することができず、交通量が非常に多い路線であることから桁下工事が主となるよう既設桁下にコンクリートアーチを構築した。構造変更は、温度変化による既設桁への温度応力を解放するため、中央ヒンジ部に可動ゴム支承を設置して、アーチクラウン部で鉛直方向のみを支持し、橋台は現支承を用いピン固定とした。また、アーチ基部は既設橋脚の底版を増厚し、アーチからの水平力を既設橋脚底版に設置したストラットを介して、山側岩盤に伝達する構造としている。耐震補強は、橋台端部支持条件が橋軸および橋軸直角方向ともピン固定となるよう変位制限装置を設置し、橋軸直角方向の既設橋脚の耐力不足に対してRC巻立てにより補強した。
煤谷川橋梁は、近鉄京都線宮津・狛田間で一級河川煤谷川を跨ぐ鉄道複線橋梁である。この一級河川煤谷川の拡幅改修事業に伴い、鉄道営業線の安全性を確保した煤谷川橋梁の改築計画を立案した。 そこで、一級河川煤谷川の改修事業における鉄道複線橋梁の架替え計画1)2)3)並びにPC下路単純桁の当夜における一括横取り架設の工事概要4)について述べるものである。
本報告は、本設計に先立って行われた設計(以下「当初設計」)で決定された橋脚形式や支間割を、橋梁本体のみの検討でなく、交差物件の平面線形の見直しや、地下埋設物の移設など、橋梁周辺を含めた範囲での再検討を行い、橋脚の構造性改善と、コスト縮減が達成されたことについて述べる。 再検討を行った項目は、(1)支間割,(2)地下埋設物の移設,(3)高架橋の直下を併走する一般道の中心線シフトの3 項目で、これらのうち、(1)を除く2 項目について、コスト縮減が達成でき、コスト縮減効果は約11 億円であった.
公共事業を取り巻く厳しい社会情勢から、橋梁の建設についても、コスト縮減・品質向上が重要な要求事項のひとつとなっている。コスト縮減・品質向上を実現するための既存構造の見直しや施工方法の工夫等が検討されているが、新たな構造形式の開発を通じて更なる飛躍を得る可能性がある。本稿では、既存構造に対し、コストを抑えつつ機能を向上させることを主眼として開発した2種類の橋梁形式を提案する。 @鋼コンクリート複合トラス・ダブルデッキ構造:道路部(PC桁)を下弦材、軌道部(PC版桁)を上弦材とし、その間を鋼トラスウェブで結合した鋼コンクリート複合トラス・ダブルデッキ構造 A改良型フィンバック橋:従来のフィンバック橋のケーブルを覆うコンクリートの大部分を排除することで、長スパンで低桁高だけではなく、道路利用者からの眺望確保ならびに開放感の向上を図った構造とした、改良型フィンバック構造
鋼3径間単純鋼桁橋の橋脚耐震補強に新技術・新工法であるPC&PA工法(PC連結材による既設橋の耐震補強工法)を採用した設計事例の報告である。本橋は、河川を渡河する橋梁であり、橋脚は河川内に位置している。従来工法である橋脚柱の巻き立て補強工法では、阻害率や環境への影響等といった河川の制約条件を満足させることは困難であった。それより、本工法を採用し、制約条件の課題を解消し、従来工法に比べ、コストの縮減、施工工期の短縮が図れた。
現行の防護柵設置基準は性能照査型の基準となっており、新基準で規定されている性能は@車両の逸脱防止性能、A乗員の安全性能、B車両の誘導性能、C構成部材の飛散防止性能であり、これらの性能は基本的に実車衝突実験により照査することとなっている。 一方、既設橋梁に設置されている旧基準で設計された防護柵のうち、高架橋等で多く用いられている直壁型の壁高欄は基準の改定に準じた更新を受けずに竣工時のままで供用されており、新基準に規定されている乗員の安全性能や車両の誘導性能を有しているか否かが明確になっていない。 新設置基準によると、この照査を行うには基本的に実車衝突実験で確認する必要が生じるが、実験には多くの費用と時間を要することとなる。そこで、車両衝突数値シミュレーションを用いて、直壁型壁高欄の乗員の安全性能等を照査する手法を提案するものである。
平成16年8月10日午前0時15分、国道168号の奈良県吉野郡大塔村宇井地先において、地すべりによる崩落が発生し道路部分も崩落した。この様子は各テレビ局のニュース番組で大きく取り上げられ、非常に衝撃的なもので災害への危機感を改めて痛感させられるものであった。幸い事前の危険予知対策により交通規制が行われていたため、人身の被害には至らなかったが、現在も道路が寸断され、旧大塔村(現五條市)はじめ十津川村方面の住民の暮らしに多大な影響が及んでいる状況である。 本論文は、この大規模な地滑りにて崩落した一般国道168 号の復旧及び辻堂バイパスの整備に伴う橋梁計画について報告するものである。本路線は紀伊半島を縦断する主要輸送路線及び周辺住民の生活道路であり、早期の復旧が望まれているため、橋脚柱に高強度材料やインターロッキング式配筋を用いるなど、コスト縮減及び工期短縮に配慮した橋梁計画についてとりまとめたものである。
本検討は軟弱地盤主体で形成される大阪湾岸地区での開削工法によるトンネル工事(阪神高速道路淀川左岸線)における土留工の設計手法について、現阪神高速指針による設計の現状および施工済箇所での設計結果と実施工での計測結果との比較結果から得られた問題点を整理し、実施工に近い結果が得られる設計手法を考案することを目的としている。またこの検討結果を基に今後工事を行う予定である箇所の土留工設計を行い、現阪神高速指針による設計結果との比較を行う。