本橋梁は、トンネル間に計画されており、全体の非常駐車帯配置計画から本橋梁区間に非常駐車帯を設けることが必要となった。PCコンポ橋のように主桁がプレキャスト構造で張出し床版が RC構造の場合には、場所打ち桁の場合に比較して、自由度が少ない構造であるため、何らかの対策を講じる必要がある。本論文では、一般国道 483号北近畿自動車道和田山八鹿道路事業のうち、兵庫県養父市畑地先に架橋計画された畑川橋(下り線)の非常駐車帯構造形式結果とFEM解析結果について報告する。
鉄道構造物の建設地点の中には,地表面や耐震設計上の基盤面が大きく変化しているような特殊な地盤条件も数多く存在する.このような地盤では,波動複雑な伝播をしたり表面波等2次的な波が発生することなどから,局所的に地震動が増幅されたり継続時間が伸びてしまうことが,これまでの地震被害の分,地震観測および数値1)本報では,不整形軟弱地盤上に建設予定の鉄道高架橋において,地盤の2次元はRC橋脚および橋台で,当該地盤は非常に高い被圧下地盤の加速度波形を入力波形として橋梁の3次元骨組み解析をおこなった結果を報告する.
本検討は、制約条件が厳しい立地下におけるRCラーメン橋脚のレベル2地震動に対する耐震補強として、既設橋脚断面での耐震性能を明らかにした上で、対策検討フローを作成し,橋軸方向および橋軸直角方向での耐震補強の工法選定を行い、補強効果を検証した。具体には、橋軸方向の補強には柱部を補強(RC巻立て補強等)することが困難であるため、設計手法を一般的な静的解析から動的解析を採用することで、レベル2地震動に対して必要な耐震性を有していることを確認した。また、橋軸直角方向の補強には施工時に料金所施設、ETC混在車線への影響が出ないよう@柱内側へのRC巻立てによる補強、A底版増厚による補強、B炭素繊維シートによる補強の3案を抽出し比較検討を行った。その結果、炭素繊維シートによる補強工法を選定することで、せん断耐力の向上が図れ、破壊形態を曲げ破壊型へ改善することができた。また、支障物件への影響も最小限に留めることが可能となった。
平成7年に発生した阪神・淡路大震災以降、地震防災対策の一環として既設構造物に対して様々な耐震補強工事が行われてきた。この中で、既設RC橋脚に対する耐震補強を行う場合には、その柱(壁)部分をRCや鋼板あるいは繊維シートなどで巻立てる工法が多く用いられてきた。しかしながら、補強によって柱(壁)部分の耐力を向上させたことにより基礎の耐力不足を誘発する場合があり、結果として基礎の耐震補強を含む大規模な対策を実施しなければならないことが多かった。そこで筆者らは、補強の対象となる橋脚の両側に橋脚頂部と地盤とを斜め方向に接続する形でケーブルを配置し、このケーブルにより橋脚の地震時における変形を抑制し、耐震性能を向上させる新たな耐震補強工法を考案した。
本稿では、3径間連続PC桁を支持する歩道橋橋脚に対して、この斜めケーブルによる新たな耐震補強工法を採用した設計事例について、その解析手法や従来工法との比較結果などについて報告する。
近鉄奈良線連立事業における東花園駅付近高架橋は,営業線に挟まれた狭あいな場所で基礎工事を行わなければならない。従来から多く採用されてきたリバース工法による場所打杭では,スタンドパイプの建込み,削孔機の据付け・撤去,鉄筋かご吊込み,コンクリート打設等,複数工程の現場作業が必要で,安全管理に十分な配慮が必要なだけでなく,プラント設備の配置場所,駅舎周辺ではベントナイトによる現場の汚れに対する旅客への配慮等,課題が多い。
そこで,今回はこれらの課題が克服できる工法として「回転圧入鋼管杭」を採用した。本稿は,その設計,施工について報告する。
キーワード:鋼管杭,営業線近接施工,線路切替,変形性能,杭頭結合
本配水池は、岡山市水道局配水施設中最大の有効水量30,000m 3(7,500m 3の×4池)の地下RC構造であり、岡山市西部の配水に大きく関わる重要施設である。昭和
56年に竣工しており、現在基準での耐震性能は有していないことが予想された。
本論文では、本配水池の耐震診断、耐震補強方法、および老朽化に対する劣化補修の概要について紹介する。
本報告は,国道 370号美里バイパスの詳細設計着手時に実施された設計VE検討に関するものである。本VE検討は,過年度に実施された基本設計成果において選定された橋梁計画(以下,原案と称する)に関し,価値向上を図るために,機能的なアプローチを行い,機能の確保・向上とともに,より経済的な代替案をVE案として提示し,今後実施される詳細設計に反映していくことを目的としている。
本設計VE検討の結果,橋梁部を中心に構造の合理化および機能向上を図ることが可能となり,原案に対して,初期建設費で 20%,ライフサイクルコストで
36%程度のコスト縮減が可能となった。
本論文は、自動車専用道路の既設特殊擁壁を対象としたリニューアル計画(新活荷重対応)において、擁壁天端部に設けられた張出し床版部に対して実施した補強検討について報告するものである。対象とした擁壁の床版の張出し長は最大 2.0mであるが、既設張出し床版の現況照査では、付根部(道路横断方向)、張出し床版先端付近(道路縦断方向)とも道路橋示方書に示される安全性を確保できない結果になり、補強方法について検討をした。道路横断方向の補強方法としては、近年PC橋に採用実績が増えているストラット構造を抽出したが、明確な設計方法はなく、三次元 FEM解析を実施して道路縦断方向の床版の応力分布や性状について検証をし、擁壁補強の効果と設計方法の妥当性を確認した。
本内容は、トンネル検査時に使用する撮影システムを紹介するものである。トンネルの維持管理に関しては 1999年に発生した山陽新幹線のトンネル剥落事故より、本格的に検討が進められ 2007年 1月には国土交通省鉄道局および鉄道総合技術研究所より「鉄道構造物等維持管理標準・同解説」が刊行された。これにより鉄道事業者は同標準に準拠した構造物の維持管理を実施することとなり、検査業務に関しては今まで以上の技術向上が期待される。
トンネル検査ツールとして、軌道モーターカおよび軌陸車を利用した大型の高性能撮影機器が多く開発されているが、コスト面等の問題より実運用に至っていない鉄道事業者が多く、 2年ごとの通常全般検査では人力による目視調査およびデジタルカメラでの変状撮影を実施しているところが大半である。当社はこの検査業務を受注しており、現場での検査業務で得た実績をもとに、人力での現場作業の効率化を目的に簡易的な撮影システムを開発した。本システムは人力検査作業を支援するものであり、大型の高性能撮影機器とは比較できるものではないが、人力での検査作業の支援として大きな力を発揮するものと考えている。
論文要旨
本論文は、既存の鋼アーチ橋に対して、レベル2地震動に対応する耐震性能照査及び耐震補強実施設計を行った事例を示すものである。耐震補強対策案としては、アーチ下横構部は座屈拘束ブレースに取替、アーチ支承部は浮き上がり防止対策、アーチリブ・支柱断面部材などは部材補強対策などがあったが、補強量の軽減を図る必要があった。そこで振動低減効果を得るために最小限必要となる座屈拘束ブレースの使用範囲を適切に定めた。結果としては、座屈拘束ブレースの設置により、支承部の反力の低減が確認できたことで、支承部の浮き上がり防止対策を不要とすることができた。
本論文は,合流式下水道の改善を目的とした雨水地下貯留施設計画のうち,施設の合流点とポンプ室を兼用する大深度地下円形立坑(ニューマチックケーソンφ 18.0m,H=60m)の計画において,大深度における常時の応力特性を,3次元立体 FEM解析を用いて検証し,部材設計を行った事例について報告するものである。
一般に,立坑開口部の断面力は弾性梁モデル等を用いて算出するが,大深度においては側圧や軸力が増加するため,その応力特性が単純な梁理論とは大きく異なることが想定される。このため,開口及び施工ステップ(構造系の変化)を考慮した 3次元立体 FEM解析による断面力解析を行い,大深度円形立坑の応力特性について解析的検討を行った。
山陰本線鎧・餘部間に位置する余部橋りょうは,風に対する列車運行の定時性確保を目的として,鋼製トレッスル式橋りょうから PC箱桁橋への架け替えが行われる.本橋梁は景観に配慮して低桁高 3.5mの等断面構造とし,構造形式は大偏心アウトケーブル形式の PC連続箱桁橋とすることが決定していた.
本橋りょうは高橋脚を有する長周期系の構造であり,地盤条件,構造条件等から地震時に複雑な挙動を示し,主要部材が耐震で決定されることが明らかとなっていた.これに対し当初構造案に対して耐震性の面から照査指標を設定し各種検討を行った結果,ラーメン構造では所定の桁高および等断面構造を維持できないことが判明した.このため桁の軸方向の移動制限構造を提案し,桁式構造を採用することによって設計コンセプトと耐震設計の両立を図った.
都市高架橋の設計において,橋脚下に営業地下鉄があり,地下鉄の土被りが 3.4mと少ない条件下であることから,上空を縦断する高架橋基礎に地下鉄跨ぎの鋼製フーチングを採用した。また,鋼製橋脚から鋼製フーチング・杭への力の伝達が,スタッドジベルを介してうまく伝達できるか FEM解析により検証を行った。本稿では、鋼製フーチングの設計事例及び FEM解析について報告するものである。
我が国における立体交差工事は、都市部でのボトルネックの解消による環境負荷の低減や地元住民に対する安全確保と言った目的を達成する為に、いずれも狭隘な用地の中での施工と言った厳しい条件化で施工されている。そのため、軌道函渠自体の構造条件や施工条件等も厳しさを増し、函渠の品質を確保するための新たな問題が生じている。
本文は、狭隘な施工状況で構築された既設函渠に発生したひび割れの原因を推定し、同様の施工方法が避けられない本設計構造物に対して、設計段階からひび割れ防止のための対策を検討し、設計に反映した事例として結果を報告する。
既設鋼橋に関する塗装塗り替えは、鋼橋の寿命を大きく左右する重要な要素である。鋼橋の塗装塗り替えは、外観上の塗装劣化や錆の発生状態や、およそ 10〜15年を目安とした、再塗装が行われてきた。
一方、塗装技術の進捗に伴い改訂された基準「鋼道路橋塗装・防食便覧」等では、鋼橋の長寿命化を目標に耐久性向上の観点からエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ふっ素樹脂等の重防食塗装を使用する傾向にあり、橋梁各部材の環境(例えば、伸縮装置付近,桁の内外など)に応じた塗り分けを推奨している。
さらに、最近では社会資本ストックに対する社会のニーズや経済情勢から、長寿命化に向けた計画的な維持管理を目指そうとする取り組みが行われている。
これらを背景として、既設鋼橋の塗り替えに当たっては、従来の画一的な塗り替え手法を改め、塗装劣化の実態把握、塗装の劣化予測、供用期間中の LCC(ライフサクルコスト)を考慮した塗り替え計画が必要となるものと考える。ここでは、これらを勘案した具体的な既設鋼橋の塗装計画手法を提案するものである。
既設の補剛矩形断面柱を対象として,補強に伴う耐荷力の上昇の低減,および柱部材全体の変形性能の向上とをともに実現可能な耐震補強法として,隙間空けコンクリート充填補強法を提案している.この補強法は,コンクリート充填柱にコンクリートを充填しない断面区間(以下, EPS断面区間という)を設置する方法である.本研究では,既往の実験結果に基づいて,橋脚柱高さの 1/5まで部分的にコンクリートが充填された既設の鋼製橋脚柱に対する EPS断面区間の設置効果,および終局限界状態を明確にし,弾塑性解析のための EPS断面区間の M-φ関係を提案している.また,この M-φ関係を用いて,隙間空けコンクリート充填構造の実橋脚柱への適用性を検討している.
鉄道構造物の維持管理のなかでも,定期的な検査(通常全般検査)は,構造物の状態や経年変化を把握するうえで重要な行為であるが,一方で,調査,健全度の判定,記録整理,といった作業に多くの時間と労力を必要とする行為とも言える。近年,これらの合理化,効率化を目的としたシステム化が進みつつある。その 1つに,今年通達された「鉄道構造物等維持管理標準」に準拠した,構造物管理支援システムが鉄道総合技術研究所と複数の鉄道事業者とで共同開発された。
構造物管理支援システムが,定期検査をはじめとした維持管理業務に効果的に活用されることを目的に,システム運用に関わるサポートプログラムを具体化し,鉄道事業者の支援を開始した。支援の主な内容は,導入時のネットワーク整備,データベース作成・登録,システム操作教育サポート,システムを用いた検査運用マニュアル整備,検査運用 OJT,現地検査・診断代行,データ管理サポート,諸資料の登録など,本システムの運用に関する「一環サポート」としている。これらの内容は,実際の鉄道構造物の定期検査業務で 2年間検証し実用化したものである。