加古川水系水田川の中流部では浸水被害に悩む都市河川改修事業において、山陽電鉄と山陽新幹線が併走する連続したが鉄道交差部が障害となっていた。新幹線高架橋基礎には杭基礎部と地中梁部があり、平常時は杭基礎間を通水し、洪水時は地中梁上部を越えて流下する分合流施設の計画を行った。計画の前提条件として、山陽電鉄交差部において現況の軌道高を上げない高水位の設定と余裕高の確保が、河川改修事業効果を早期に発現する必要条件となった。
本論文では、分合流部における3次元流れなどの複雑な水理現象が発生するため、分合流施設計画の立案にあたって、分合流施設を含む河道の水理模型を活用した実験により、原設計案の問題抽出と分析、改良案の検討、および水理実験の意義について考察する。
通常の洪水時水位の再現手法として、樹木は死水域として準二次元不等流計算を行うが、山口県に位置する佐波川では、樹木が河道内に密集していることから、より精度の高い水位計算を実施するために樹木は低流速域として扱い、透過粗度として計算する準二次元不等流計算モデルとすることにより、従来の手法より高精度なモデルとすることができた。
具体的には、生長錐を用いた現地調査の結果から樹齢と樹高、枝下高及び胸高直径との相関式を算出することにより現在の樹木状況から過去の状況を推定し、下草の有無も踏まえて透過粗度を算定し現況再現モデルを作成した。
この計算モデルにより既往の昭和 47年7月洪水、平成 11年6月洪水の実績再現計算を実施し、従来モデルの計算結果との比較から、本手法がより実現象を表現できている計算モデルであることを証明した。
本研究では,交互砂洲が経年的に移動し水衝部が変化する特徴をもった那賀川を対象に,平面2次元河床変動解析モデルを構築し,砂洲の移動特性の再現性を検証した。また構築したモデルで, 30年間の洪水ハイドログラフを用いて長期的な砂洲の移動を予測し,河岸の維持管理上,将来的に危険となる箇所を抽出した。
京都府が管理する二級河川宇川では、平成 2年の「『多自然型川づくり』の推進について」の通達を受け、中小河川としては先駆的な多自然型川づくりによる河川整備に取り組まれた。この通達が出される以前から、宇川では天然アユの生態に関する調査研究が行われ、河川生態学の分野では、古くからその名がしられていた。平成 5から約 3カ年で集中的に整備された宇川での多自然型川づくりは、魚道整備が主体であり、その後、 3年間隔で効果を把握すべくモニタリング調査が実施された。さらに、平成 16年度から平成 20年度までの 5カ年を第二期整備計画と位置づけ、第一期多自然型川づくりに対する補完的な整備に着手するとともに、流域全般を通した自然再生を目指した活動が進められている。
本稿では、これまでの宇川での多自然型川づくりに関する取り組みを紹介するとともに、限られた予算等の中で、どれだけ元来の自然環境に復元できるか、その創意工夫に関する現状での取り組みについて、詳述する。
福井県嶺南地方の三方五湖では、過去に幾多の出水により、湖特有の湛水が数日続き交通網の分断、農作物の被害が頻繁に起きている。また、三方五湖内で最も水深が深い水月湖は、上層部が淡水、下層部が海水である二層化の状態になっている。その水月湖に洪水流が流入した場合、下層水塊が上層へ連行されることによる上層の水温の低下、塩分の増加、溶存酸素量の減少とともに、湖底に滞留している硫化水素が巻き上げられることが考えられる。本検討では鉛直方向の混合を考慮した湖水の流況及び水質のシミュレーションを行うために、レベルモデルに基づく多層平面流況・水質モデルの構築を行った。
本モデルが妥当であるかの評価に当たっては既往の水質観測結果との比較による再現検証結果から再現性が高いことが得られた。最後に、今回のシミュレーション結果から得られた知見を元に、現状のシミュレーションモデルについて再現性の評価を行った。
なお、多層平面流況・水質モデルについては誌面の関係上、一部を割愛してとりまとめを行っている。
兵庫県沿岸では,台風 0416号,0418号来襲にともなう越波,越流等によって,甚大な高潮被害を受けた.このような高潮被害を完全に防ぐことは,非常に困難であり,被害を最小限に食い止めるためには,台風が接近するまでの事前の対策が必要である.その対策を適切なタイミングで,適切に判断するためには,各地域における最高潮位や最大偏差,およびそれらの生起時刻について,正確なリアルタイムの予測が必要である.
本業務では、台風が接近するまでの事前の対策を適切に判断するために、兵庫県沿岸を対象として、海岸・港湾管理者が運用できる簡易な高潮リアルタイム予測システムを開発した。 2004年の台風を対象とした高潮計算によって,本システムの有用性を確認し,台風 0613号を対象としたリアルタイムの高潮予測によって,本システムの有効性を確認した.
本論文は、和歌山県新宮市の一級河川熊野川の河口付近に位置する池田港の整備計画の内容と計画立案までのプロセスを報告するものである。計画に際しては、周辺の水辺空間を含めた全体整備構想の検討を行ったほか、まちづくり計画との連携や住民参加による計画の立案を行い、周辺の水辺空間との一連の流れや施設の位置付け,機能について整理している。それらを踏まえ、地形条件や川舟の利用に考慮した護岸形状や周辺地域景観との一体を図る石積みなどを計画に取り込み、歴史,文化を踏まえた地域になじむ景観,および整備後の運用を視野に入れた河川空間整備の実現を試みている。
日本の河川流域は,その地形・地質および水文学的条件により,世界的に見ても土砂生産の盛んな特性を有している.『水の世紀』と喩えられる 21世紀を迎えた今,流域の土砂管理は我々に与えられた迅速かつ早急に解決すべき重要課題の一つである.中でも通常のダム貯水池は,河川流を一旦貯留し,上流からの流入土砂を多量に捕捉してしまうといった特性を有しており,流域内での土砂管理の際のキーポイントとなる.
以上の背景を踏まえ,本研究では,今後の貯水池土砂管理の鍵となる持続可能な恒久的貯水池土砂管理に着目し,各堆砂対策工法の特性整理および実施条件を踏まえた分類を行った.また,恒久的堆砂対策の導入推進のための提案を行った.
本業務は、工業用水道管の海底横断管の立上り部を対象として腐食調査および防食対策の検討を行ったものである。港湾構造物については、腐食に対する研究並びに多くの防食工法の開発が行われていが、矢板護岸や鋼管杭の防食対策の事例が多い、海底横断している工業用水道管の立上り部の様な事例は少ない。本業務では、対象管の健全度調査を行った結果、不健全な状態である判断されたため被覆防食工による対策を選定した。
神戸市東部、六甲山麓に位置する市街地において、2河川(観音寺川、高尾谷川)合流部の水を地下河川に流入させる河川改修計画があり、高落差の段差処理工が設計上の課題であった。計画地は、急勾配地形で許容される敷地は狭く限定されている。この立地条件と高落差(約10m)を考慮し、螺旋階段式立坑を採用し設計することにした。
螺旋階段式立坑内の流下特性は、その構造が複雑であることから水理模型実験による検証を必要としたため、明石工業高等専門学校の神田佳一教授の協力をいただき、計画条件を入力して水理模型実験を行った。その結果、計画高水量(1/100)に対して2河川の合流、落差工処理、放流水路への流出及び底内堆砂の懸案事項について問題のないことが確認された。また、超過洪水量(計画高水量の130%)に対しては、2河川の合流の支川部において溢水が認められ、立坑の天板(床版)に内圧が作用することが認められた。