第40回 研究発表会論集 要旨 <土質系 28〜32>


28.軟弱地盤大規模掘削における非線形 FEM解析

論文要旨

大阪駅改良工事の一環として、駅北側に大型複合施設が建設される。建設にあたり既存高架橋に近接して大規模掘削が行われる。本研究では、土留壁の遮水性と補助工法として用いるソイルバットレス工法の変形抑制効果を中心に、土留壁および周辺地盤の変形挙動について検討した。なお、解析手法は弾粘塑性構成式を用いた水−土連成有限要素解析法を使用した。その結果、ソイルバットレス工法による土留壁の変位及び地盤のひずみ量の低減効果が確認されたが、ひずみに関しては無対策の場合と同様掘削中央付近に発生するため注意が必要であることがわかった。さらに、土留壁の遮水性が十分でないと土留壁背面地盤の圧密沈下を引き起こす結果となった。また、背面地盤の沈下量を許容変位以下に抑えるためには土留壁の遮水性を1.0×10-8 (cm/s)以下を確保する必要があることが分かった。

キーワード

大規模掘削,軟弱粘土層,弾−粘塑性解析,水−土連成有限要素法



29.国道直下を横断する河川トンネル(山岳工法)の影響検討

論文要旨

1級河川の改修計画において治水上必要となる本放水路は、山岳工法で計画されている河川トンネルである。
本トンネルは、発進坑口付近において土被り約 9.4m(1.6D)で国道直下を横断する。トンネル坑口部における地山条件は一般に良くなく、さらに低土被りという悪条件下での施工を余儀なくされた。そこで、当該区間においてトンネル掘削に伴い有害な影響が懸念されたため、トンネルの施工及び国道や周辺への安全性を確認するための影響解析(フレーム解析及びFEM解析)を行った。本論文は、その影響検討の概要、結果及び施工時の管理計画について報告するものである。

キーワード

河川トンネル,山岳工法,国道下横断,影響解析



30.沿岸構造物のチャート式耐震診断システムの開発

論文要旨

地震後の海岸保全施設の変形量を、断面諸元、地震動条件、地盤条件から簡単に推定できる沿岸構造物のチャート式耐震診断システムを開発した。本稿では、開発にあたり 2年間にわたり実施した検討項目の内容や結果を紹介する。

キーワード

海岸保全施設、耐震診断、 FLIP



31.液状化判定法の考察と耐震設計への応用

論文要旨

兵庫県南部地震以後、大規模地震(レベル2地震)に対する液状化検討が不可欠となった。これに伴い、液状化を考慮しなければならない事例が増えている。この場合、液状化により杭基礎等の諸元が決定されるため、液状化判定(予測)や液状化における設計法は非常に重要である。
液状化判定については、設計標準の簡易式を用いて行う方法(簡易法)と繰返し三軸試験、地盤の地震応答解析により検討を行う方法(詳細法)とがある。本稿では、液状化の危険度が異なる2種類の地盤を対象に、鉄道設計標準による簡易法および詳細法各々での検討を行い、その結果の差異について考察した。さらに、より高度な液状化判定法である有効応力での1次元地盤地震応答解析を行い、その解析結果を活用した耐震設計を試みた。この設計手法についても報告を行う。

キーワード

液状化,地震応答解析,有効応力解析,



32.地すべりを伴う急傾斜地崩壊対策事例

論文要旨

延長 400mの急傾斜地崩壊危険区域において,地すべり性の変状を伴う斜面変状が確認された。通常、急傾斜地崩壊危険区域で対象となる斜面災害は,表層崩壊や小崩壊,あるいは現状では崩壊発生の顕著な兆候はないが,将来的に比較的規模の大きな崩壊を誘発する可能性のある,地形地質的素因を有する斜面が該当するものである。これに対して本事例では,一連の長大斜面において,斜面中腹から端部にかけて厚い崖錐堆積物が分布し,これがいわゆる「地すべり」的な変状と挙動を示す(延長 100mのブロック)など,一般的な急傾斜地の崩壊機構と異なるものであった。本報告は,この対象ブロックにおける調査・対策工の設計事例について,その詳細を述べるものである。業務の流れとしては,まず,現地調査を行い,本報告の対象となる「地すべり」的な変状と挙動を示すブロックの存在を明らかにした。この地すべり変状の素因及び誘因を特定するべく,地質調査を実施し,機構解析を経て、対策工法の検討・設計を行った。対策工の選定では,各種の制約条件を考慮した上で,グラウンドアンカー工による抑止力の導入を図ることとなった。

キーワード

斜面安定,ボーリング,弾性波探査,すべり面