都市水路・農業水路などに流水を引き入れて環境用水を創出し,身近な水環境を再生しようとする取り組みが進展している。環境用水等の創出の事例および研究者・コンサルタントで構成する環境用水研究会の研究成果を踏まえ,環境用水の評価手法及び住民の役割りについて考察する。
事例から環境用水創出の課題は, 1)技術的・理工学的な課題, 2)社会学的な課題, 3)制度的・法的な課題に分類することができる。 1)に関する課題としては「利用目的が競合する場合の優先順位の付け方」などが代表的なものである。この課題に対して研究会では,「環境効率」を用いた評価フレームを提案し,研究に着手した。
2)に関する課題としては,例えば「用水の質・量に関する住民意識の反映方法」などが上げられる。この課題に対してワークショップを通じて,地域住民による「環境用水の評価指標」の作成を試みている。今後さらに,技術的な検討だけでなく,地域社会における合意形成の方法論などガバナンスの視点をふくめた,多角的な研究を進めたい。
富山市の城址公園は中心市街にある数少ない樹林で、貴重な市民の憩いの場である。しかし、冬季にカラスが大規模なねぐらとして利用しており、「糞害」や「嫌悪感を感じる」などの被害がみられ、市に対して対策を求める声が寄せられている。このため、今後のカラス対策の基礎資料とする目的で、城址公園周辺でのカラスの生息数調査を行うとともに、カラスを城址公園周辺に過度に集中させないための実験を行い、その効果の検証を行った。
調査対象河川は、自然再生事業として干潟再生を実施中である。また、今後も流域全体を対象とした川づくりの推進を計画している。そこで関係者間の合意形成を円滑に実施するための事前調査として、意思決定を合理的に実施するうえで有効な手段といわれているAHP1)(階層化意思決定法)を適用した住民を対象としたアンケート調査を実施することとした。本調査の分析結果からは、個人属性に関する設問を工夫しクロス集計することにより、個人の属性の違いが河川事業に対する意見の違いと相関することを確認することができた。
本論文は、住民参加型川づくりの導入段階に実施したアンケート調査の結果分析を紹介し、分析のための既存アンケート調査結果の再利用について考察したものである。
芦屋市の市街地部を対象に、残留塩素濃度の計測値を整理、評価したところ、六麓荘給水区域の残留塩素濃度の低下が著しいことが明らかとなった。本研究は、管網解析ソフト MIKE-NETを用いた水理・水質解析を行うことにより、六麓荘給水区域における残留塩素濃度低下原因を解明するとともに、残留塩素濃度低下の効果的な改善策を提案し、その改善効果を定量的に評価したものである。
芦屋市の市街地における17地点の残留塩素濃度計測結果より、水温が上昇する夏場に残留塩素の低下が大きく、特に、落合橋調整池地点で残留塩素濃度の低下が著しいことが確認できた。そこで、芦屋市市街地部の管網解析モデルを構築、解析したところ、他の給水区域における平均的な管網内滞留時間が1日程度であるのに対し、落合橋調整池を含む給水区域の滞留時間は約3日と長いことが確認された。そこで、残留塩素濃度が低下するいくつかの原因の中からこの滞留時間に着目し、同給水区域を拡大することによりその需要量を増大させ、滞留時間の短縮を改善策として提案した。そして、同改善策により、滞留時間を1/2程度に短縮できること、残留塩素濃度の低下量を抑制できることを明らかにした。
現在、道路の霧対策として採用されている数種の対策工は、すべての霧について有効なものではない。そのため、各地域・路線毎に適切な対策を検討する必要がある。本論文は、過去の気象調査で濃霧の発生が懸念されている滋賀県内の新名神高速道路(甲賀〜大津地区)において、利用者の快適性、安全性を確保するための有効な霧対策工を検討したものである。当該路線の甲賀〜大津地区は、日本でも有数の霧発生ポイントであり、特に山間部を路線が通ることから、利用者の安全確保のための霧対策工が必要な箇所であった。今回は、当該地区の気象特性を詳細に捉えるため、定点機器を設置して 24時間体制で気象調査を行い、既存データも含めてデータ解析することにより当該地区に適した対策工を立案するとともに今後の対策工運用方法も提案した。また、対策工の効果検証に当り、供用前の高速道路上での実走行試験を行い、走行試験中に記録したビデオ映像を解析した。