第40回 研究発表会論集 要旨 <計画・交通系 38〜46>


38.JR姫新線及び山陰本線・播但線の利便性向上対策の検討

論文要旨

地方部における公共交通の中心である鉄道は、利用者数の減少によりサービス水準が減少し、それに伴い利用者数が減少し採算性がさらに悪化するという悪循環を起こしている。地元からは、鉄道の電化、複線化などによるサービス水準の向上を要望する声が多いが、時間と費用がかかる施策であり抜本的な施策であるかもしれないが、現実性、即効性に乏しい施策である。そこで、住民ニーズを充分には把握することにより、より即効性、実現性の高い鉄道の利便性向上策について検討した。その効果については、住民の鉄道利用意向を反映した施策効果を検討し、電化や複線化に相当する効果が得られることを確認した。検討対象としたのは、兵庫県西播地域のJR姫新線、但馬地域のJR山陰線・播但線である。

キーワード

鉄道、住民アンケート、需要予測



39.住民参画による近代土木遺産の保存・利活用検討におけるコンサルタントの役割

論文要旨

土木遺産は、地域の人々の日常生活にとって欠かすことのできないものであるばかりでなく、その土地の風景の一部を担ったり、人々の心に深く根付いた存在となりうる。それゆえ、土木遺産の保存・利活用の検討にあたっては、地域住民の深い思い入れを踏まえた、住民参画の計画づくりが重要となる。
瀬田川南郷洗堰の保存・利活用にあたっては、住民ワークショップや取り組みの“アイデア”を実際に行ってみるモデル試行(イベント等)などを実施し、土木遺産に対する住民の想いを取り入れた保存・利活用に向けた計画策定を行った。本稿では、この取り組みを事例に、コンサルタントとしての視点から、保存・利活用の手法や技術者が果たすべき役割について考察した。
その結果として、コンサルタントが担ってきた役割についての意味付けを整理するとともに、今後の展開に向けた、技術者としての役割、住民との役割分担等のあり方、学識者や管理者とのコラボレーションの必要性、PRの必要性について指摘した。

キーワード

土木遺産、保存・利活用、住民参画



40.既設橋梁架替工事に伴うホ適な仮橋設置計画

論文要旨

本論文は、橋梁架替工事等において仮橋の設置が必要となった際のホ適な設置方法を示したものである。仮橋設置の際には、既設橋梁時とは異なった箇所に交差点が設置されることから、平面線形、縦断線形の見直しも必要となってくる。このような地形状況に対応しつつ、沿道利用環境を悪化させない対応策を見い出すことが求められる。そこで、仮橋設置の際に有効となると思われる対応策を挙げ、様々な沿道環境に即した施策を示す。

キーワード

沿道環境、仮橋設置位置、道路計画



41.地上デジタルデータ放送技術を用いた道路情報提供の試み

論文要旨

本稿は、新たなマスメディアとして期待されている地上デジタルデータ放送(以下、地デジと称す)について特徴を整理すると共に、今後、地デジが道路情報の提供メディアとしてどのような役割(位置付け)を持つべきかを検討したものである。その結果、地デジはテレビという身近さや利用のし安さ、情報提供の安定性などから、台風や大雪、地震等の異常時における道路情報の提供と言う面において今後大いに期待されるメディアと位置付けられた。
また、国土交通省兵庫国道事務所は株式会社サンテレビジョンとの協働で地デジによる道路情報提供の実証実験を実施された。当社は委託業務として実証実験の実施業務を受注できたので兵庫国道事務所の了解を得てその概要を紹介するものである。

キーワード

地上デジタルデータ放送,道路情報提供,災害,実証実験



42.地域特性を考慮した災害危険度判定調査の手法について

論文要旨

本論文は、地域特性の異なる多様な様相の市街地を抱えた都市において、各市街地の地域特性を考慮した災害危険度判定調査の実施手法について報告するものである。
具体的には、 1)延焼の拡大過程に着目した調査フローの設定、 2)施策展開を図る上で重要となる他事業との連携を考慮した評価指標の閾値の変更、 3)主に低密度の市街地の地域特性を考慮した災害危険度判定調査実施手法の工夫について、その概要を紹介するものである。
近年、南海・東南海地震などの大規模地震災害への対策の強化が求められており、そのためには市街地に潜在する危険性を的確に把握することが必要となる。このため、本論文で紹介するような地域特性を考慮した災害危険度判定調査の手法を蓄積し、市街地に潜在する危険度を的確に評価する技術へとつなげていきたいと考える。

キーワード

災害危険度判定調査,地域特性,大規模地震対策



43.「にそと」事業の理解・促進に向けた新たな取り組み紹介

論文要旨

京都第二外環状道路(以下、「にそと」と表記する)は、大枝 IC(仮)〜久御山 ICをつなぐ総延長 15.7kmの4車線の自動車専用道路である。平成 15年には、本路線の一部、大山崎 JCT・IC〜久御山 JCT間6.3kmが開通し、現在大枝 IC(仮)〜大山崎 JCT・ICの整備事業が進められており、事業を円滑に推進するために、住民の理解促進を図ることが重要となっている。
本文書では、オープンハウス(以下、情報館と表記する)を中心に、ホームページ運営やイベントの実施し、 (株)西日本高速道路が発行する広報紙について、総合的な広報のPDCAサイクルによる継続的改善を行った結果、情報館の来館者が前年度と比較し、 1.4倍に増加するなどの効果が得られたため、その取り組みについて紹介する。

キーワード

道路広報PR,アカウンタビリティ,事業効果,地域連携,住民参加



44.宇部市都市計画マスタープランの楠地域合併に伴う改定について

論文要旨

本論文は、都市計画マスタープラン策定済みの旧宇部市と未策定の旧楠町が合併して誕生した宇部市において、都市計画マスタープランの改定を行った際の検討内容をまとめたものである。マスタープランの策定段階においては、できる限り市民が参加できるプログラムを設け、市民・行政・専門家の協力によってまちづくりの課題や方針をつくりあげていくことに注力した。
将来のまちづくりの方針としては、「拠点連携型のコンパクトなまちづくり」を目指すこととし、区域区分を適用しない“非線引き都市”として線引き制度に代わる用途白地地域における土地利用コントロール方針を示した。さらに、新市の一体感を醸成するため、自然環境や歴史資源等の地域資源を活かし多様な交流・連携を促進する方策を示した。

キーワード

都市計画マスタープラン,市町村合併,市民参加,非線引き都市,地域資源



45.藤井寺市あんしん歩行エリアにおける社会実験

論文要旨

藤井寺市では、「あんしん歩行エリア」を中心とした地域の交通安全対策として、ハンプ、クランクなどの設置の検討を行っているが、これらは近畿圏でもあまり普及はしておらず、住民への周知、理解を深めることが重要と考え、社会実験をとおしてハンプ、クランクの効果検証を行うとともに、住民意向調査等も合わせても行い、今後の導入に関する検討を行うこととなった。
ハンプ、クランクについては、速度抑制効果は一定の区間についての平均走行速度を基準とした効果検証は行われてきたが、車の素行状況を細かに把握し、解析を行った上で、ハンプ、クランクなどの速度抑制効果を検証したものはほとんどなかったと思われる。
このため、今回の社会実験では、ハンプ、クランクの効果検証を行う際に、プローブシステムを用いて 1秒ごとの車の走行状況を解析することにより、より詳細な検証を行った。

キーワード

社会実験、プローブシステム、ハンプ、クランク、住民参加



46.スマートICの本格運用に向けた取り組み〜徳島自動車道吉野川スマートIC社会実験を通して〜

論文要旨

国土交通省では、既存の高速自動車国道の有効活用や、地域生活の充実、地域経済の活性化を推進するため建設・管理コストの削減が可能なスマートIC(ETC専用IC)を導入するとして、平成 16年度より社会実験を実施してきた。吉野川ハイウェイオアシススマートICは、フルサービスとして全国初(社会実験としては全国2番目)のスマートICとして平成 16年 10月 31日より社会実験が開始され、約2年後の平成 18年 10月 1日より「吉野川スマートIC」と名称を改め本格運用を開始した。
社会実験では、施設を利用する歩行者動線とスマートIC動線の錯綜での安全性確保や役割分担を明確にした運営マニュアルの作成、誤進入・安全対策の実施、安全確保を前提とした交通整理員削減による運営コストの見直し、便益や料金収入に直結する利用促進策の実施、社会的整備効果の把握などを行った。本論文では、社会実験の取り組みを紹介すると共に、スマートIC社会実験を通してスマートICの取り組みを考察するものである。

キーワード

スマートIC,社会実験,整備効果