沿革と経緯
1.建設コンサルタントのはじまり
戦前の土木事業は、内務省を初め各官公庁は自ら多くの技術者をかかえ企画、 設計は勿論施工に至るまでかなりの部分を直轄直営方式にて実施してきた。
戦後建設業者の施工能力が増大するに従い、工事の施工は請負が主流となったが、工事の調査、計画、設計および施工管理は依然官公庁自らの手で行われる時代が続いた。
しかし、昭和30年頃より公共事業の急速な増加に伴い事業実施体制の分業化が要請され、この頃より始まった電源開発、名神高速道路、東海道新幹線等の大規模工事への世銀を始めとする外資導入にあたって外国コンサルタントが来日し、我が国の建設コンサルタントに多大の刺激を与えるとともに、いわゆる建設コンサルタント業務として外注する企業者が増えてきた。
これらの状況をふまえて、昭和34年1月「土木事業にかかわる設計業務等を委託する場合の契約方式等について」(昭和34年1月19日建厚発第3号)として建設事務次官通達が発せられ公共事業への 積極的な建設コンサルタントの活用の道が開かれた。
その後、昭和36年の「所得倍増計画」「経済社会発展計画」等一連の経済政策に伴う飛躍的な建設事業に対して、建設コンサルタントの参加はますます重要な地位を占めることになり、公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和27年法律第184号)が昭和37年3月29日に改正された際に保証対象として、測量(設計)として括弧内にて定義されたのが法律の文面にコンサルタント業務が現れた最初であり、昭和38年5月中央建設業審議会へ「建設コンサルタントを育成するための方策」についての建設大臣の諮問があり、同年9月の答申を受けて昭和39年3月4日付にて、建設コンサルタントの積極的な活用を建設事務次官名をもって通達し、併せて各発注官庁等に対して活用方の協力を依頼された。
また、昭和39年4月建設コンサルタント登録規程(昭和39年4月7日建設省告示第1131号)が制定され、建設事業を取り巻く業種として建設業法に規定する以外の建設関連業として測量業、地質調査業、建築設計監理業とともに建設コンサルタント業を位置づけし、建設事業に関する計画、調査、立案、助言、および建設工事の設計、施工管理等を行う建設産業の重要な一翼を担うこととなった。初期の頃は企業数も少なく、専ら随意契約とされていたものが、建設コンサルタント業務等請負業者選定事務処理要領(昭和45年12月) により競争入札の時代を迎えることとなった。
2.阪神地区建設コンサルタンツ協力会時代
昭和37年4月20日、在阪の建設コンサルタント業7社が集まり、阪神地区建設コンサルタンツ協力会を 設立したのが今日の(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部の始めである。 この協力会は阪神地区における建設コンサルタント業界の発展とスポーツを通じ相互の親睦図ることを 目的とし入会基準は下記とした。
・土木に関する設計、施工管理を本業とするもので施工兼業でないこと。
・見積りおよび入札の権限を有する本社、または支社の類の所在地が京阪神地区であること
等を審査のうえ協力会の会員とした。
協力会として活動を始めるや、発注機関より設計業務に関する諸資料の調査依頼があり、実績調査のうえ 答申し理解を得た。
昭和38年3月4日、東京において(社)建設コンサルタンツ協会として社団法人の設立が認可され、 昭39年9月22日、本部理事会において大阪支部規定が決定され、阪神地区建設コンサルタンツ協力会は 昭和39年12月16日の例会をもって発展的に解散した。
3.(社)建設コンサルタンツ協会大阪支部時代
(社)建設コンサルタンツ協会は「建設コンサルタント業務の改善を図り、建設技術および事業の 進歩発展に寄与する」ことを目的に次の事業を行う。
@建設コンサルタント業務の進歩改善に関する調査・研究。
A建設技術向上に関する研究。
B会員相互の親睦ならびに情報の交換。
C建設コンサルタント業務の発展に寄与するために国内および海外宣伝。
D業務資料の収集ならびに提供。
E会報その他の印刷物の刊行および配布。
F関係法その他についての官公庁等に対する建議ならびに答申。
Gその他本会の目的達成に必要な事業を実施する。
支部は、本部との連絡調整を図り、かつ近畿地区における会員の業務発展を図ることを分担し福井・滋賀・京都・ 大阪・兵庫・奈良・和歌山に本社を有する正会員および正会員の近畿地区内にある支店・営業所などで構成し、 構成員全員をもってする協議会を毎月定期的に開催することとした。
業務内容の具体的明示、適正歩掛りによる積算、 業務の平準化と業務期間の適正化について各発注機関に 建議するとともに、一部の発注機関に対して前払金制度の適用方を陳情した。これら建議陳情活動を行ううち、 近畿地方建設局から同局の共通仕様書の改定についての意見の提出方を求められ、あるいは、 発注者側から見た建設コンサルタントに対する意見を直接聞く機会での発言や各発注機関からの要望もあって、 昭和41年1月以降技術研究活動に積極的に取り組むこととなった。
会員の業務の中から生み出されている実務的で利用効果の高い技術研究調査結果を公表し、 建設工学ならびに建設技術の進展に寄与する機会として「業務研究発表会」を開催することとし、
昭和43年8月に第1回業務研究発表会を開催し、今日に至っている。
昭和44年6月、資料編集委員会において編集した資料を会員以外の希望者に配布し、 技術の向上に寄与し、昭和44年12月支部の技術部門への賛助会員組織として「資料協力会」 を設け名称を「建設技術資料センター」とし、入手困難な多くの技術資料を紹介した。
昭和47年9月、近畿地建より“ケーソン工事の省力化に関する研究”を受託することとなり、 会員企業と学識経験者を集めた受託委員会を組織して対応した。これ以後の受託業務の先駆となり、 概ね毎年1〜2件を受託する時期が昭和50年まで続いた。しかし、会員各社の技術力の急速な向上に伴い、 支部が受託することの必然性が薄くなり、以後は委員会組織を以って対応する必然性が高く発注先より 特に希望のある場合以外は直接会員会社と契約されるよう、各発注機関に建議した。
4.(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部時代
昭和52年4月、 支部の名称を大阪支部から近畿支部に改め、名実ともに、近畿地区における 建設コンサルタント業界の責任団体として、ふさわしい体制と事業の実施に努めることとなった。 近畿支部の技術研究活動に対し、昭和57年4月13日付け、57特総第294号をもって、 特許庁長官より特許法第30条第1項(実用新案法第9条第1項において準用する場合を含む) の規定に基づく学術団体の指定を受けたことは、“技術の近畿支部”に対する公の評価を得た訳であり、 先人の調査研究の蓄積の賜物である。かくして各方面から期待を頂いている調査研究活動を計画的に実施する 方向が固められた。
昭和60年3月、 昭和49年に特許出願した「井筒または潜函の頂版を構築する方法」および 昭和61年5月には「井筒または潜函の躯体」に特許証が授与された。
平成元年6月、支部事務局は大阪市中央区上町A番12号に移転した。
平成元年5月10日、 永年渇望していた「建設コンサルタント中長期ビジョン(ATI構想)」 が建設省において策定され、建設コンサルタントの具体的な努力目標が示された。
平成3年度の建設省の重点施策として、コンサルタント技術者に対する資格制度の創設が取り上げられ、 将来的には国家資格を予定し、当面は(社)建設コンサルタンツ協会の認定する資格としての シビルコンサルティングマネージャー(Registered CivilEngineering Consulting Manager=RCCM) 制度がスタートした。
平成4年、本部通常総会の席上において『技術の近畿』が認められ技術部会が本部表彰を受けた。
平成4年6月25日、支部創立30周年を祝う記念式典と祝賀会を官民多数の来賓の出席を頂いて盛大に 開催した。独占禁止法遵守を目的に、独禁法に関する特別委員会を支部役員会直属の委員会として設け、 公正取引委員会等から講師を招いて研修会を開催し、折にふれて「独禁法の遵守」を会員に呼びかけた。 近畿地方建設局の斡旋により、「建設コンサルタントの現状と要望」に関する意見交換会に近畿地区の府県・ 指定市からの出席を頂くこととなり地域委員会の活動が本格化する端緒となった。
平成6年1月、日米建設協議ならびに建設産業をめぐる一連の不祥事に端を発する 「公共事業の入札・契約手続きの改善に関する行動計画について」が閣議了解され、 可能な限り6年度当初予算にかかわる公共事業から基準額以上の調達について透明性、客観性、 競争性を確保した契約方式が実施され建設コンサルタント業務においても「公募型プロボーザル方式」 「公募型競争入札方式」の導入が始まり、従来に増して技術力の向上が重要となってきた。
平成7年1月17日午前5時46分頃、淡路島を震源地とする震度7の地震が発生、 協会本部に「総合対策本部」近畿支部に「現地対策本部」を設置し関係諸機関との連絡調整にあたった。
地震発生と同時に関係諸機関から近畿支部会員会社に、被害状況調査、災害復旧調査設計等の 支援要請があり、各社は総力を上げこれに対応し不眠不休の業務を重ねた。支援人員は1月17日から3月18日までの 2ヵ月間で70社、延べ40,493名に及んだ。1月27日、 本部会長、支部副支部長が兵庫県庁を訪問義援金 (2千万円)を渡した。大災害に鑑み本部に「災害対策本部」を、各支部に「災害対策支部」を常時設置すること とした。
平成7年5月、「公共土木設計業務等標準委託契約約款」が策定され、これを受け各発注機関では 「土木設計業務等委託契約書」「設計業務共通仕様書」等の改訂が行われ、契約当事者の権利と義務、 契約履行にあたっての手続き、著作権の譲渡、一括再委託の禁止、照査技術者の選定、瑕疵担保等が明確となった。
平成8年1月、「公共工事の品質に関する委員会報告」が公表され、発注者・設計者・施工者が 明確にされ、三者が一体となった総合的品質管理TQMの推進が提言された。一連の制度改革等をふまえ、 今後における社会資本整備の動向、建設生産システムの変化等の中で建設コンサルタントが果たさなければならない 役割と施策を提示した「建設コンサルタント中期行動計画ATI−21」が策定された。
平成8年12月、行財政改革の一環として、公共工事の建設費縮減が緊急課題となり、 (社)建設コンサルタンツ協会では、建設コスト縮減のため自ら実践すべき行動計画と提言をまとめた 「設計改革宣言」を平成9年3月に発表した。